第3回公判の報告

第3回公判の報告 2024年10月28日(月)

 東京高裁805法廷にて差し戻し審の第3回公判が開かれました。32席の傍聴券を求めて125名が並びました。朝方から勢いよく降っていた雨は午後2時の開廷の時間には止んでいました。
 今回は、弁護側が推薦した真下知士氏(マシモトモジ東京大学医科学研究所教授)の証人尋問です。真下氏は 30年以上遺伝子の研究に携わり現在日本ゲノム編集学会会長を務めています。真下氏はまずDNA鑑定、DNA定量について解説し、科捜研が行ったDNA定量検査の問題点について述べ、検察の依頼で池谷氏が検証したDNA定量検査については「恣意的で賛同しない」と結論付けました。

開廷前に裁判所表門で街頭宣伝
開廷前に裁判所表門で街頭宣伝

証人尋問の主な内容

科捜研の鑑定について

  • DNA定量検査に影響を与える要因は、資料、鑑定キット、実験器具、検査者の手技、実験環境、検出方法等があげられるが、検量線は検査ごとに作成することで、測定値を正確に解析できるだけでなく、様々な要因がその日の環境条件に合っていたことが確認できる。さらに、自分の実験で得られたデータの信頼性、再現性、正確性を保証することができる。検量線の再利用は残念。
  • 科捜研が行ったDNA定量検査はDNA型鑑定が目的であり、一人が一度しか行っておらず試料も保存しておらず科学的信頼性を著しく欠くデータである。しかも古い方法で精度が低い。このキットだからこんなに高い値が出た。定量を目的とするのであれば一般的にもっと精度が高い方法がある。これは担当者が悪いのではなく、このような鑑定をやらせた組織に責任がある。

池谷鑑定について

  • 唾液中のDNA量がごく少量だったために唾液DNAを断念して、口腔スワブDNAの定量を行った。唾液のデータでみれば同じキット、使用法、実施者でもばらつきが数倍~数十倍と非常に大きい。
  • 高濃度DNA1.612ng/μlはバラつきや検量線では説明がつかない。唾液から得られたDNAとは
    考えられない。高濃度の値が出た理由として①サンプルの取違い・混入、②実験操作や解析方法
    の間違い、③データの見間違い・書き間違い、思い込み「恣意的」の可能性が考えられる。
  • 「恣意的」とは意識して嘘を書いたということではなく、測定結果の中から、自分の仮説にあったデータだけを選んで使用することで、客観性のない主観的な(自分勝手な)結果になることをいう。実験者として恣意的なデータを排除することがとても大切である。

 証人尋問の終了後、裁判所は真下意見書を鑑定書として採用した以外は弁護側、検察側双方から出ていた証拠申請についてすべて却下しました。高野主任弁護人は証拠申請していたワークシートについて「最新の技術を使えばどのように書き直されたのかがわかる可能性がある。この法廷では原本すら見ていない」と意義を申したてましたが認められませんでした。その後最終弁論と判決の日程があげられました。正式には後日指定されます。

・最終弁論 2025年1月22日(水)10時30分 弁護側40分、検察側40分
・判決   2025年3月12日(水)14時

 公判終了後、近隣の弁護士会館で報告会を開きました。
 弁護団から5名、全体で40名の参加でした。弁護団から小口弁護士は「真下先生は完璧に話をしてくださったが、裁判所は二審で経験したように理由も書かずに有罪にすることもないとは言えない。裁判所に正しい判断をさせるため、もともとわいせつ行為は不可能だという世間の声を集中させることが大切だ」と説きました。重要な証拠であるワークシートを証拠採用しなかった点について水沼弁護士は、「裁判長は1.612の数字しか興味がない。無罪の証拠を調べないで有罪と書けば、上告されて破棄差し戻しとなる危険性がある。自分は甘いかもしれないが科捜研の鑑定で有罪とは書きづらいのではないか」と述べました。

第26次裁判所要請行動を行いました

 10月30日 第26次の裁判所要請行動を16名で行い、署名3593筆を提出しました。累計は5万2千172筆になりました。参加者からは以下のような発言がありました。
 「病室の状況から、女性患者の訴えはせん妄によるものである事は明らか。ぜひ現場を見てほしい」「患者が手術後にせん妄状態になることは特別珍しいことではない」「医師の逮捕は民医連の病院に対する弾圧の側面がある」「本人や家族の心身のストレスは耐えがたいものがある。はやく安心して生活できる状態にしてほしい」「袴田事件では裁判所は捜査機関の捏造を認めた。裁判所が冤罪に加担するようなことはあってはならない」
 裁判所要請行動はこれからも毎月続けていきます。引き続き署名活動にご協力ください。

差し戻し審の公判が始まりました

第1回公判の報告 2024年9月18日


東京高裁805法廷で差し戻し審の第1回公判がありました。傍聴席42席の805号法廷で行われます。家族や報道関係者の席が確保されているので抽選で傍聴できるのは28席でした。傍聴券を求めて約100名が並びました。

第1回公判は弁護側・検察側双方が意見陳述をするものと聞いていましたが検察は書面のみの提出でした。

弁護側は30分を希望していましたが裁判所の意向で15分間口頭弁論を行いました。高野主任弁護人は「一度しか測定していない、しかも書き換えた跡があるワークシートしか残っていないDNA定量検査で人を有罪にしてよいのか。その分野の専門家の間で信頼できるものとして認められる水準のものなのかを明らかにする。」と陳述しました。

双方から出ていた証拠申請を裁判所は留保しました。

場所を移動して報告集会を行い弁護団から5名、全体で40名以上が参加しました。高野主任弁護人は口頭陳述の重要性について「傍聴人が何をしているかわからないような手続きでは公開裁判の意味がない。書面しかみていない裁判官にも理解してもらうためだ」と説明。触診でも大量のDNAは付着すること、ワークシートも調査するよう証拠申請してはいるが、迅速に無罪判決を確定させるために、弁護団としては2人の証人尋問に全精力を集中させたいと報告しました。

 参加者から「刑事裁判で重要なのは真実の解明であるはず。差し戻し審では全く不毛なことをしている。真実の解明は行わないのですか?」との質問がありました。高野弁護士は「差し戻し審は最高裁の出したポイントに拘束される。不毛であってもDNA定量検査の数値が正しいかどうかを検討しなくてはならない。もちろん必要な手続きをやったうえで、真実が何かを明らかにする」と答えました。また「100名以上の大法廷で行うべきではないか」との質問には「私たちも要求はしたが、東京高裁から部屋を借りることが出来なかったとの返事だった」そうです。今後の私たちの裁判所要請行動でも広い法廷を要求をしていきたいと思います。

第2回公判の報告 2024年10月9日

雨天でしたが開廷前に街頭宣伝を行い短時間でリーフレットを 50 枚以上配りました。今回の証人尋問は検察推薦の京都府立医科大学法医学教室教授の池谷博氏です。池谷証人は警視庁科学警察研究所に 2005 年から 3 年間勤務した経歴があります。前回と同じ 805 法廷で開かれ一般傍聴席は32席でした。傍聴券を求めて 106 名が並びました。

証人尋問の具体的な内容

  1. 科捜研が実際に使用した機器スマートサイクラーⅡとヒトゲノム定量キットを用いた DNA 定量検査でどの程度の精度、バラつきがあるかについて。連続した4日間の日間変動、1日5回測定した日内変動、日間変動では 3 名の検査者で同じ検査者で最大 3 割程度、異なる検査者の比較では平均 2 割程度、日内変動では同じ検査者、異なる検査者でそれぞれ最大4割程度の誤差が生じた。
  1. あらかじめ作成していた検量線を使用することで、どの程度の誤差が生じるのかについて。各検査者が初日に作成した検量線を使用して残りの 2 人の測定結果を当てはめて定量値を計算したところ平均4割から5割の誤差が生じた。ただし測定は様々な条件、室温や湿度、検査者の手技、マイクロピペットを強く押すか弱く押すか、目盛りの回転させる方向、ミキシングの方法、機器のコンディション、等々で誤差が発生する。

今回使用したDNA定量試薬は警察にのみ販売されている。試薬の誤差をメーカーは教えてくれない。検査センターや病院の検査室が行っている第3者による外部精度管理を科捜研はやっていない。当初唾液で DNA 定量をするつもりだったが測定値が小さすぎて断念。唾液採取キットのフィルターに吸着された可能性があるが確認はしていない。検査者の頬の粘膜を綿棒で拭ってサンプルとした。自分を含む3名で行ったが 1 名は途中で老眼が酷いから(良いデータが得られない)と辞退したので別の人と交代した。検査者はこの装置を使い慣れていなかったが、科捜研であれば毎日使っている装置なのでより精度が高いデータが出たはずだ。今回3名の平均値や標準偏差を計算したが数が少なくて統計学的な意味はない。ワークシートを鉛筆で書いたり消しゴムで消したりするやり方は適切ではないが、それをもって測定結果が信用できないということにはならない。

公判終了後場所を移動して報告会を開きました。弁護団から 7 名、合計約 30 名が参加しました。

差し戻し審の公判期日が確定しました

第1回公判 2024年9月18日(水)15時 ~ 
第2回公判 2024年10月9日(水)13時30分~                       
第3回公判 2024年10月28日(月)14時~ 
 
              
 法廷はすべて東京高裁805号法廷(席数は42席)。傍聴券は抽選になります。通常は開廷の30分から40分前に裁判所の指定した場所に来られた方を対象に抽選します。指定場所、抽選時間はこの原稿を作成している時点ではまだ公開されていません。第1回公判は弁論更新手続で、第2回・第3回公判は専門家証人尋問です。

2024年5月30日の決起集会の報告

 2024年5月30日の決起集会「東京高裁(差し戻し審)で無罪を確定させるつどい」は会場に113名、オンライン26カ所の参加がありました。弁護団から主任弁護人の高野隆氏が「差戻控訴審について」と水沼直樹弁護士が「精度管理・DNA」を報告。裁判の見通しと「科捜研のDNAの測定方法はズサン」「女性患者にDNAが付着する可能性が非常に高い」ことが詳しく分かりました。 

 とりわけ、「人は顔を触る」という論文を多数見つけて、外科医師の取り調べ画像で顔を触る数を数えた等の緻密な取り組みに、驚きと感動の声が上がりました。外科医師の母が渾身の力で発言し、大きな拍手が湧きました。会場でカンパが18万円余り集まりました。

いただいた質問にお答えします
a) 8/25逮捕され釈放されるまでの103日間(原文ママ)、外科医師と警察の間にどのようなやり取りがありましたか。
⇒ 警察は事件が起きてから外科医師を尾行して、自宅のゴミをあさりDNAを回収していました。逮捕勾留後は容疑を認めるよう強要されたが、外科医師は黙秘を続けました。

b) 病院スタッフが口裏合わせをしている?と言ったのは誰で、どんな理由からそのような発言、疑問を持たれたのですか。
⇒ 一審で検察が、八巻医師、看護師は病院関係者であるから虚偽の証言をする動機があり、信用できないと主張しましたが、裁判所は検察の主張は具体的な証拠に基づかない憶測にすぎない。各証言が詳細な点が異なっていても、前提事実と整合しない点は無くむしろ自然で、同室患者の証言も含めて信用できるとして、検察の主張を排斥しました。

2024年5月30日の決起集会の報告

 2024年4月22日の北千住駅宣伝には28人参加。1時間でリーフ100枚を配れ、署名40筆の協力があるほどの好反応でした。「外科医師の元患者。心配している」という激励もありました。

 2024年6月14日には高裁前で宣伝(11人参加)。1時間でリーフ100枚以上配り、1万円のカンパを頂きました。

4月22日 北千住駅宣伝
6月14日 東京高裁前宣伝

署名4万筆を提出

勝利のために、いっそうご支援をよろしくお願いします

 外科医師を守る会会員のみなさん、支援者のみなさん。日頃のご支援に、あらためて心より感謝申し上げます。HPの更新が出来ずにいたことを、お詫び申し上げます。

 2022年2月の最高裁判決から、2 年が経ちました。この間、弁護団・検察・裁判所による「進行協議」(非公開)が行われてきました。弁護団は、来たる公判に向けて、専門家によるDNA鑑定や意見書作成など万全の準備をすすめています。進行協議も、いよいよ大詰めです。

 最高裁は、二審の実刑判決を破棄はしましたが、検証不能なDNAの鑑定結果で有罪にする道を示しました。そのため、差戻審は全く楽観できません。また2023年8月には、裁判長が近藤宏子氏から齊藤啓昭氏に代わりましたが、齊藤氏が最高裁上席調査官の時にえん罪・大崎事件で異例の再審請求棄却がされており、決して油断できない状況です。最高裁では、10万筆を上回る署名を提出し、皆様のおかげで二審・実刑判決を破棄することが出来ました。無罪を勝ち取るためには、最高裁のときを上回る運動が必要です。署名とカンパのご協力を、どうぞよろしくお願いします。

2024年2月21日 第18次裁判所要請

 外科医師を守る会は、毎月の要請行動を実施し、署名を提出してきました。また、参考になる書籍や文献なども提出。「本件のDNA保管方法が警察庁の内部通達に違反している」ことを示すために警察公論も提出しています。2024年3月21日の第19次要請で累計40651筆の署名の提出となり、4万筆を超えました。また、宣伝や集会などでの訴えも強めてきました。

 2023年9月14日には、北千住西口に18人で駅頭宣伝を行いました。「ずっと、気にしてました」と署名してくれる方もおられました。

2023年9月14日 北千住駅で署名・宣伝

5月30日 第9次高裁要請を行いました

 2023年5月30日、東京高裁へ第9次の要請行動を行いました。14名が参加して署名598 筆を提出しました。累計は3万1千762筆になりました。今回は学術団体「法と心理学会」の学会誌2017 年号の特集記事「バイアスと冤罪」を提出しました。女性被害者や検察官が嘘を言うはずがないと思い込んでいる裁判官がいます。最初から被告人を犯人と決めつけ、恣意的に証拠を解釈して冤罪が作られています。

参加者からは以下のような訴えがありました

・病室は事件が起きるには到底あり得ない環境でした。これまで医師は無罪だという多くの方の賛同があって5 月1 日のメーデーでも多くの人に訴えさせていただき、殆どの人があり得ない話だと分かってくれました。性犯罪には常習性言われますが、外科医師はこれまで多くの女性患者の手術を行ってきて、一度も訴えられたことはありません。裁判所は適切に判断して一日も早く無罪にしてください。
・私は以前病院で看護師をしていて、せん妄の患者を多く見てきました。全身麻酔の手術から30分ほどしか立っていない患者の言動で医師が逮捕されるなんて考えられません。手術直後は看護師が頻繁に世話で出入りします。わいせつ行為があり得ない環境であることは病室で働いている職員ならすぐわかります。
・検察は無理なDNA鑑定を押し付けてきました。科捜研は科学的根拠のない杜撰な鑑定をして一審では無罪になりました。公正な裁判で早く無罪を確定させて、外科医師の名誉を回復させてください。
・長年看護師としてその後はケアマネとして医療の現場で働いてきました。この事件を身近に感じています。データを削除したり検体を廃棄して第三者が検証できなくなりました。診察をすれば舐める以外にもDNAは付着します。科学と呼べない証拠で有罪にするなんてあってはならないし、医療の現場が委縮して患者さんが不利益を被ることになります。医療現場で働く人達は注目しています。ぜひ公正な審理をお願いします。
・全くあり得ない事件だと思います。外科医師を助ける為に私にできることは何かと考えて
周りの人達に声をかけて署名を集めています。ぜひ速やかに正しい判断をしていだいて無罪判決を出してほしいと思います。
・乳腺外科医事件は医師が逮捕されたときから関心がありました。本人はもとより、家族の苦しみは想像を絶するものだと思います。一刻も早く公正な審理をお願いします。
・ある日突然普通の生活が奪われてしまったことを思うと、心が痛みます。私も7年間弁護士さんの話を聞いたりして、この事件は常識的にあり得ない話だと思います。ぜひ無罪判決をお願いします。

 今回提出した学会誌の記事「天文館強姦被告事件の予断」では、科捜研のDNA鑑定は抜本的な変革が必要だと述べています。当該事件で科捜研は検証に必要なデータを消去してDNAは定量できなかったと報告しました。一審の裁判官は検察の主張を盲信して懲役4年の有罪判決を言い渡しました。しかし2審の鑑定で被告人とは別のDNA型が検出されて、福岡高裁は科捜研によるデータ隠しまで疑って無罪判決を言い渡しました。
 2016年1月、この事件の反省から警察庁はDNA鑑定の記録保存などを見直す通達を出しました。ところが同じ年の6月に起きた乳腺外科医師事件では、科捜研はこの通達を無視して反省は生かされませんでした。警察の一部門である科捜研には有罪にするために証拠を捏造する動機が常にあるのです。科捜研の鑑定には当然第三者による検証が求められてしかるべきです。

4月14日、「東京高裁(差し戻し審)で勝利をめざすつどい」を開催

 4月14日、「東京高裁(差し戻し審)で勝利をめざすつどい」を北千住会場とオンライン併用で開催し、約90名が参加しました。最高裁で差し戻し判決が出されて約1年。公判が開かれていない中、外科医師の主任弁護人である高野弁護士が参加のみなさんへ裁判支援のお礼を述べるとともに「改めて事件を振り返りましょう」とこの間の裁判経過を辿りました。

4月14日 北千住会場

 検察から物的証拠として出されているのはDNA検査時の鉛筆書きで消した跡が何カ所もあるワークシートだけで、写真やDNA量を裏付ける検査基準線もない。証言でもそうした科捜研の非科学的やり方が初めて表沙汰になった。満床の多床室で物理的にもあり得ない行為、医師としての動機もないことで、1審は無罪になった。2審有罪判決は非科学的証言を採用して有罪としたが、最高裁はこれを否定し、検査の疑問点を解明しろと差し戻した。しかし、検察は裁判争点になっているのに検体を捨ててしまい「再検証は不可能」となり、自ら科学を否定している。なぜそこで無罪とならないのか?司法で科学の常識が通ることを願っているし、最後まで諦めないと語りました。高裁の現状についても、現在は非公開の会議が続いており、公判日程は未定。検察は、DNAに関すること以外に、「せん妄」についても主張している。弁護団は、一審以上に精緻な実験や検証をしようとしていると報告しました。
 外科医師を守る会呼びかけ人である救急現場の医師が、現場で「せん妄」が実にたくさんあると紹介し、それで有罪とされるなら国民の命や健康へ影響が及ぶと訴えました。外科医師のお母様も「私は絶対に諦めません」と力強い訴え、万雷の拍手が起こりました。最後に会から①署名を広げる、②実験のためのカンパの協力、③リーフを活用して、事実を多くの人に知ってもらう、④会への入会のお願い、⑤集まりや記事などで事件を訴える機会を提供して欲しい、の5つのお願いを行いました。引き続き、更なるご支援ご協力をお願いします。

1月24日、高裁要請を行いました

 今回は16人が参加し、署名4,521分を提出(累計25,304人分)し、担当者に要請を行いました。署名の累計は2万5千を超えました。多くのみなさんからご協力頂いたことに感謝するとともに、引き続き署名を広げて頂く様お願い致します。要請時には、他に国民救援会都本部大会決議や警察庁通達を提出しました。

 参加者それぞれが発言を行いました。元看護師さんは、手術直後の様子を臨場感あるお話、訴えたいことを文書にまとめて提出する方もおられました。また、コロナ禍のために来たくても来れない医療関係者や、外科医師・家族への思いもたくさん語られました。「無罪というよりも、無実というのを強調したい」等、皆さんから真剣な訴えがされました。

 2023年の幕開けにふさわしく、一日も早く無罪を勝ち取りたいという思いが伝わる熱気溢れる要請行動になったと思います!最高裁判決から、まもなく1年です。高裁・差し戻し審での無罪を勝ち取るため、ウサギの飛躍のごとくがんばりましょう!!

12月13日、高裁へ署名提出と要請を行いました

 東京高裁へ差し戻し審の第4次要請行動を9名で行いました。署名5,760筆を提出しました。差し戻し審の署名の総数は2万783筆となりました。

 さらに今回「冤罪白書2022・燐燈出版」と「日本の法科学が科学であるために・現代人文社2021年」の二つの文献を提出しました。

 「冤罪白書」は、冤罪を叫ぶ人の声を裁判所に届けるため出版されました。2019年から毎年発行され今年で4冊目です。本号で、外科医師裁判の弁護団である趙誠峰弁護士によって、上告審の問題点が克明に書かれています。最高裁では、弁護団は科学的証拠の許容性について明らかにするよう要請しました。専門家でない証人の証言を証拠として許容できるのか。再現性・検証可能性を一切残していないDNA定量検査は証拠として認められるのか。ところが最高裁は、これらを自ら判断することなしに、高裁へ差し戻しました。最高裁判決は、検察にチャンスを与え裁判を長引かすものであり、推定無罪の原則に反します。被告の外科医師にとって非人道的です。

 巻末には、水野智幸氏(法政大学教授・元裁判官)によるこの事件の地裁判決・高裁判決の比較検証が載っています。科学的証拠についてのスタンスの違いが結論を分けたと分析しています。(※法科学とは科学捜査研究所・科学警察研究所による科学鑑定をいいます)

参加者からの高裁への要請概要

・9月に弁護士を講師に学習会を行い約50人が参加しました。参加者の多くが、病室で犯行はあり得ないと疑問に感じていました。当時麻酔に使われたプロポフォールは、一般的な麻酔薬ですが、性的幻覚を見やすいと言われています。女性患者の証言が信用できなければ、外科医師は無実です。この事件はもう6年経ちます。裁判所は審理を進めて一日も早く無実の判決を出してほしい。

・外科医師と家族は人生を壊されて、とても苦しんでいます。この事件は麻酔によるせん妄以外の何物でもありません。裁判所にはとにかく審理を尽くして、1日も早く助けてほしい。

・柳原病院には健診でお世話になった。この事件を知って、何としても外科医師本人や家族を苦しみから解放させたい。私にできることはこの事件の酷さを周りに知ってもらうことと、署名に協力してもらう事。一審で無罪が出たのに、新しい証拠が出たわけでもないのに、なぜ有罪になるのか理解できない。

・科捜研は、抽出液を破棄してもガーゼが残っているというが、中央部の灰色の部分を切り取って鑑定につかって、周りの色が変わっていない部分では再鑑定をする意味がない。しかもガーゼは冷凍ではなく室温で保管されている。この事件本質は、わいせつ行為をされたという女性患者の証言が信用されたことが大きい。しかし実際の病室でわいせつ行為は実現可能なのか。カーテンのそばに母親。女性患者から外科医師の下半身は見えない。裁判所は現場検証をするべきです。一方、看護師の証言は病院関係者だから信用できないとは・・・公平に審理をしてほしい。

・麻酔の手術でせん妄が起きるという事をこの事件で知った。自分自身は2度麻酔の手術を受けたことがあるが、最初はとても痛かったが2度目はいつ終わったのか分からないくらい痛みは無かった。年数を経て医学が進歩したのかもしれないけれど、麻酔は怖いと感じた。

・DNA定量の検量線が捨てられたことについて、決まっている濃度のものを測ってその値が出るという証拠が検量線。検量線がなければ測定値を保障するものが無いただの数字でしかない。ところが科捜研の技官は、検量線を捨てたことをについて、何が悪いんですかくらいの態度だった。分析を行っている者として、自分が出す値の根拠を消してしまう行為はあり得ない。

・大勢の眼があっても、わいせつ事件が起きることはあります。それは被害を受けている女性に対して、周囲の関心が向いてないからです。ところがこの事件は違います。同室の斜向かいのベッドの患者は女性患者が気になって覗いていたと証言しています。術後のケアで看護師が頻繁に出入りして、女性患者に注意を払っていました。何か起きればすぐに騒ぎになる状況であることを、医師であれば理解しています。

9月13日、署名提出と要請をしました

 9月13日、差戻審の第3次要請行動を行いました。8名参加7,415筆の署名を提出しました。署名の累計は15,023筆となりました。今回は以前に作成したQ&Aパンフレットと、一編の論文(本庄武 刑事手続きにおける科学鑑定の現状と課題  一橋法学2017〔16〕第1号1~21)を提出しました。

 参加者からは、以下のような発言がありました。

 多くの医療従事者にとって、この病室の状況で、わいせつ行為は不可能なことは理解できます。では実際の検察が出した証拠はどうだったかと言えば書き直した跡があるワークシートや、検証ができないDNA鑑定など信用することは出来ません。本日提出した論文には「捜査段階で科捜研が行う鑑定は、有罪仮説を立証する目的で行われるので中立性に限界がある」「鑑定の信頼性を確保するためには科学的な検証可能性が必要」とあります。有罪にするためのバイアスがかかっている前提の科捜研の鑑定は、科学的検証なしに採用すべきではありません。

 裁判を傍聴しました。検察官のやり方を聞いていて、自分の考え方と違うという事がものすごく多かった。そういう意味では検察は一般常識から反したやり方をやっている。裁判所は、もう少しよく見てもらいたいと思います。

 自分の入院の経験から、あり得ない事件だと感じました。先生や看護師さんたちは突然カーテンを開けて入ってくる。ある意味病室は開放的です。いつ誰が入ってくるかわからない。術後30分といえば真剣に対応をしなくてはならない時間帯。その時にわいせつ行為をやろうなんてありえない。せん妄という言葉を今回初めて知りましたが本当にそうだったんだと思います。ぜひ常識的な判断をお願いします。

 義理の母の手術のときにせん妄を目の当たりにしました。母は病室の壁に、私の一番嫌いな蛇が見えると言いました。「ここにいる、ほらっ」と目の前の私に真面目に話すので、せん妄は本当にあるんだと実感しました。医師は手術をした後も患者に対して責任があります。手術の後に患者の状態が悪くなるようなことを医師自ら、するはずがありません。

 素人からみてもあり得ないこと、おかしな裁判だと思う。科学に基づいて正しい裁判をしてほしい。私は柳原病院で健診を受けていた。その病院の先生が、幸せな家庭だったはずが突然地獄につき落とされてつらい目に合っているのを思うと、無罪になるまで自分なりにできる支援を続けたい。

 Q&Aパンフレットは、デマ情報や誹謗中傷がネットを中心に蔓延っていたので、明らかになった事実、フェイクニュースに対する反論等をまとめたものです。末尾には、せん妄を知っていただくのに役立つと思われるせん妄の体験談を載せました。「冤罪を主張して、女性の尊厳を軽んじていませんか」という問いに対して、女性が性被害を受けてもその事実を封殺する社会の実態があります。これは女性差別です。しかし実際と合わない女性の証言を認めることは女性を利用しているだけで寄り添うことにはなりません。事実を明らかにすることこそが、女性をトラウマから解放し女性の尊厳を守ることだと思っています。

 要請行動は、これからも定期的に行っていきますので、引き続き署名活動にご協力をお願いいたします。

差し戻し審、高裁に署名を提出

6 月 16 日

 2,005名分の署名を提出しました。要請ではそれぞれに、未だに裁判が続くことへの怒りと無罪判決への思いを語りました。また、6月に浜松で開催された日本医療安全学会学術総会の抄録も提出。この総会では本件のシンポジウムがあり、医療関係者に大きな関心を持たれていることも報告しました。

 →署名用紙はホームページの「署名・パンフレット」タグよりダウンロードできます。


7 月 25 日

 5,603名分の署名を提出しました(累計7,608名分)。今回は、外科医師の叔父様とお母様のご友人が参加。えん罪で苦しみ続けている外科医師と家族の様子を、切々と訴えました。本件に心を痛めて精力的に支援する地元の方は、「『私に出来ることは何か』と考えて、署名を集めている。事件を伝えると、皆が驚き怒り、署名に協力してくれる。それで終わらず、署名を集めてくれる人もたくさんいる」と話しました。

 また今回は、科捜研の問題点を指摘している論文を提出しました。執筆者は、科捜研研究員が社会に対して科学者としての責任を負っているにも関わらず、裁判所の過度の信頼や捜査機関の有罪仮説を重視する期待によって「歪み」が生じ、閉鎖的で科学の規範にそぐわない鑑定が行われている点を問題視しています。

 差し戻し審は、最高裁判決に縛られることが予想され、場合によっては、充分な審理がされないまま有罪に持ち込まれる可能性があります。このような理不尽な企みとたたかうためには、署名運動を大きく展開し、世論を広げなければなりません。今後の要請行動も、たくさんの署名や文書・声を届けて成功させる決意です。裁判官に、事件への真剣な関心が広がっていることを伝えるために、一層のご支援をお願い致します。

4月15日、差し戻し審で完全無罪を目指す決起集会を開催しました。 

 4月15日、18時半より北千住にて「乳腺外科医師えん罪事件 高裁の有罪判決は破棄!差し戻し審で、完全無罪を目指す決起集会」を開催し、会場とオンラインで約100名に参加頂きました。

 守る会呼びかけ人の八巻医師が「術後に仕事があるからと頼まれ、私たちはいつも以上に気をつかって手術をした。術後戻った病室は4人部屋で、隣のベッドとは薄いカーテンで仕切られているだけ。術後管理のためにベッドは一番高く、ベッド柵もあった。看護師も頻繁に出入りしており、患者の母親もすぐ脇にいた。その中で患者さんの胸を舐めるなどできようはずもないし、一審判決でもそのように言われている。外科医師本人や家族が辛い思いをし続けている。はっきりと無罪にするために、力を貸して欲しい」と開会のあいさつを述べました。

 弁護団から主任弁護人の高野隆弁護士が、最高裁判決に関して1時間ほど説明を行いました。高野弁護士は「最高裁判決は、有罪破棄だからせん妄の可能性があるという弁護側の言い分を認めたことは間違いない」と評価しつつも、「最高裁判決の中身を見ると楽観は許されない」と訴えました。

 最高裁の判決では「専門的知見等を踏まえ、本件定量検査に関する上記の疑問点を解明して本件定量検査の結果がどの程度の範囲で信頼し得る数値であるのかを明らかにするなどした上で、本件定量検査の結果を始めとする客観的証拠に照らし、改めてA の証言の信用性を判断させるため、本件を東京高等裁判所に差し戻すこととし、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する」と記述されています。高野弁護士はこれについて「DNA定量検査における、定量値の信頼度が認められるならば、有罪になる可能性もあるというのが差し戻しの意味」と指摘しました。そして「最高裁判決は検察に3 回目のチャンスを与えるということ。こんなことが許されるのか、というのが素朴な疑問だ。検察は膨大な予算があり、科捜研という全国組織の協力を得られる。一方、我々は一市民であり、皆様の支援によってここまでやってきたが、3 回も勝たないとえん罪から逃れられないというのがこの国の司法」と告発しました。

高野主任弁護士

 そして裁判で明らかになった科捜研の検査記録を改めて示しながら、「PCR検査の検量線やアミラーゼ検査の判定写真もなく、9 箇所も消した跡がある鉛筆書きのワークシートしかない。DNA抽出液、増幅曲線は廃棄されており、検査のプロセスが検証できない。ヒューマンエラーは避けられないはず。間違いがあることが問題なのではなく、間違いがあったかを検証できることが大事。こんな証拠でいいのか」と指摘するとともに「私どもはこの土俵で闘うことも必要だが、事件の本質はここにはないと思う。1.612ng/μℓのDNA量が正しいとしても『舐めた』ことを証明しない。弁護側の検証実験でも唾液の飛沫や触診により付着した可能性があることが示されている」と解説し、無罪を確定させるために奮闘するとともにさらなる支援を訴えました。

 最後に守る会の野田事務局から、当面のみなさんへ以下の4点、

1,高裁向けの新たな署名にご協力ください。

2,無罪を勝ち取るための、支援基金へご協力ください(DNA検証実験などをやるとなれば、かなりの費用が必要となるとともに外科医師と家族の生活を少しでも応援したい)。

3,外科医師を守る会への会員登録をお願いします。

4,事件内容や裁判争点を知ってもらい世論を広げるために、集会の開催や各種のあつまりでの訴えの場を設定してください。

 と引き続き、ご支援・ご協力のお願いをさせて頂きました。