外科医師の無罪が確定しました

 検察の上告期限の前日にあたる3月25日の午後、東京高等検察庁は上告の断念を発表しました。その後、東京高裁から弁護団に「検察官から上訴放棄申立が出ました」との連絡がありました。外科医師の無罪が確定しました。この2週間で集まった署名は1万筆を越えました。検察は上告の期限を待たずして自ら上告を断念したのです。このことは、皆様から送っていただいた署名が、検察の上告断念の判断を後押ししたに違いありません。長期にわたったご支援に心から感謝申し上げます。

 無罪確定に間に合わなかった署名についても、受け取りますので迷わずお送りください。

 詳細はあらためて報告させていただきます。

差し戻し控訴審の判決がでました

 3月12日、東京高裁で外科医師えん罪事件の差し戻し控訴審の判決がありました。一般傍聴席21席の傍聴券を得るために231人が並びました。805法廷で開廷して冒頭、齊藤啓昭裁判長は「検察の控訴を棄却する」と主文を読み上げました。

 即座に私たちは裁判所正門で「再び無罪」「検察は上告するな」の旗だしを行いました。当然の判決ですが、検察が上告すれば裁判はさらに続きます。上告の期限は3月26日までの2週間です。

 閉廷後、弁護団は記者会見を行いました。高野隆主任弁護人は、「ここまで時間がかかったのは、第一次控訴審で科学的にも常識的にも論理的におかしい判決がなされたことが諸悪の根源だった」と説明。外科医師は、警察と検察は一度決めたら振り返りや修正することのない戦前の軍隊のような組織だと批判し、生活や仕事そして家族を奪われたことへの怒り、支援者や弁護団には感謝の言葉を述べました。

 記者会見の終了後、近隣で報告会を開きました。会場は支援者であふれていました。弁護団からは高野主任弁護人をはじめ6名参加されました。終始和やかな雰囲気で裁判の報告がされて、最後は外科医師に花束が贈られました。
 裁判に勝てたのは、皆様のご支援があったからにほかなりません。心から感謝申し上げます。検察に上告させないために、もうしばらくお力添えをお願いします。

ここから 署名・パンフレット

最終弁論の報告

 最終弁論の報告 2025年1月22日(水)
 差し戻し審の第4回公判、最終弁論が開かれました。開廷は10時30分ですが、裁判は最終局面であり私たちの声を出来るだけ多くの人に伝えようと、朝8時30分から街頭宣伝を行い年末年始にかけて作成したチラシを配布しました。通りかかった人達の耳には「外科医師裁判は本日結審します。外科医師は無実です。」の声が聞こえていたと思います。
 毎月の裁判所要請行動でも公判を100以上の大法廷で開くようにお願いしていたのですが、結局定員42名の805号法廷から変更されることはありませんでした。傍聴券を求めて130名が並びました。

早朝、裁判所表門での街頭宣伝

最終弁論の主な内容

 検察は「科捜研の鑑定したDNAの量1.612ng/μLは多少の誤差はあったとしても大きく変わるものではない。大量であって舐めたとしか考えられない。池谷証人の検証はサンプル数が少なくてもDNAの量を測定して最大でも4割程度の誤差であったことは動かしようがない事実である。1回だけの測定、鉛筆書き、残存試料を破棄した点などは、一般的な基準に欠けるとしても、直ちに鑑定結果の信用性がなくなることにはならない。一審の無罪判決は事実誤認がある」と訴えました。
 これに対して弁護団は、「誰がいつ作ったかもわからない検量線の使いまわし、問題だらけの数値が正しいとは言えない。池谷氏の検証では外れた値を排除した。もし1回だけの測定だったら外れていたかどうかもわからなかったはず。池谷氏自身が唾液中にDNAはごくわずかしかなかったので検証を断念し、口腔粘膜で検証を行いその数値には統計学的な意味は無いと言った。DNA量から唾液の量は証明できないことを池谷証人自身が証明した。どんなDNAの量が出たとしても舐めた証拠にならない。一審判決に誤りはない。外科医師と家族の10年近くにわたる理不尽な苦難を一刻も早く終了させるべきだ。」と述べました。
 最後に齊藤啓昭裁判長から、判決を3月12日14時に言い渡すことが告げられて閉廷しました。

閉廷後、近隣で報告会を開催しました

 45名が集まりました。弁護団から「この差し戻し審の裁判は一審が正しいか、検察によって覆されるかを審理している。私達は一審の無罪判決に自信を持っている。今日の弁論で検察の有罪立証が崩れたということを広く世の中の人たちに知ってもらい、外科医師の無罪判決をむかえたい」との発言に参加者全員が共感しました。そのあと外科医師のご家族が挨拶され、外科医師を守る会から無罪判決が確定するまで支援をやりきることを訴えて閉会しました。

最終弁論報告会の様子

あらためて皆様に署名のご協力をお願いします

 1月30日に29回目の外科医師の無実を訴える要請行動を行いました。提出した署名の累計は5万5752筆です。判決が3月12日と迫っています。さらなるご協力をお願いします。

2月10日に無罪判決を確定させるための集会を開催します

 会場参加を希望される方は事前にご連絡下さい。WEB発信も行います。
 詳細はポスターをご確認ください。

第3回公判の報告

第3回公判の報告 2024年10月28日(月)

 東京高裁805法廷にて差し戻し審の第3回公判が開かれました。32席の傍聴券を求めて125名が並びました。朝方から勢いよく降っていた雨は午後2時の開廷の時間には止んでいました。
 今回は、弁護側が推薦した真下知士氏(マシモトモジ東京大学医科学研究所教授)の証人尋問です。真下氏は 30年以上遺伝子の研究に携わり現在日本ゲノム編集学会会長を務めています。真下氏はまずDNA鑑定、DNA定量について解説し、科捜研が行ったDNA定量検査の問題点について述べ、検察の依頼で池谷氏が検証したDNA定量検査については「恣意的で賛同しない」と結論付けました。

開廷前に裁判所表門で街頭宣伝
開廷前に裁判所表門で街頭宣伝

証人尋問の主な内容

科捜研の鑑定について

  • DNA定量検査に影響を与える要因は、資料、鑑定キット、実験器具、検査者の手技、実験環境、検出方法等があげられるが、検量線は検査ごとに作成することで、測定値を正確に解析できるだけでなく、様々な要因がその日の環境条件に合っていたことが確認できる。さらに、自分の実験で得られたデータの信頼性、再現性、正確性を保証することができる。検量線の再利用は残念。
  • 科捜研が行ったDNA定量検査はDNA型鑑定が目的であり、一人が一度しか行っておらず試料も保存しておらず科学的信頼性を著しく欠くデータである。しかも古い方法で精度が低い。このキットだからこんなに高い値が出た。定量を目的とするのであれば一般的にもっと精度が高い方法がある。これは担当者が悪いのではなく、このような鑑定をやらせた組織に責任がある。

池谷鑑定について

  • 唾液中のDNA量がごく少量だったために唾液DNAを断念して、口腔スワブDNAの定量を行った。唾液のデータでみれば同じキット、使用法、実施者でもばらつきが数倍~数十倍と非常に大きい。
  • 高濃度DNA1.612ng/μlはバラつきや検量線では説明がつかない。唾液から得られたDNAとは
    考えられない。高濃度の値が出た理由として①サンプルの取違い・混入、②実験操作や解析方法
    の間違い、③データの見間違い・書き間違い、思い込み「恣意的」の可能性が考えられる。
  • 「恣意的」とは意識して嘘を書いたということではなく、測定結果の中から、自分の仮説にあったデータだけを選んで使用することで、客観性のない主観的な(自分勝手な)結果になることをいう。実験者として恣意的なデータを排除することがとても大切である。

 証人尋問の終了後、裁判所は真下意見書を鑑定書として採用した以外は弁護側、検察側双方から出ていた証拠申請についてすべて却下しました。高野主任弁護人は証拠申請していたワークシートについて「最新の技術を使えばどのように書き直されたのかがわかる可能性がある。この法廷では原本すら見ていない」と意義を申したてましたが認められませんでした。その後最終弁論と判決の日程があげられました。正式には後日指定されます。

・最終弁論 2025年1月22日(水)10時30分 弁護側40分、検察側40分
・判決   2025年3月12日(水)14時

 公判終了後、近隣の弁護士会館で報告会を開きました。
 弁護団から5名、全体で40名の参加でした。弁護団から小口弁護士は「真下先生は完璧に話をしてくださったが、裁判所は二審で経験したように理由も書かずに有罪にすることもないとは言えない。裁判所に正しい判断をさせるため、もともとわいせつ行為は不可能だという世間の声を集中させることが大切だ」と説きました。重要な証拠であるワークシートを証拠採用しなかった点について水沼弁護士は、「裁判長は1.612の数字しか興味がない。無罪の証拠を調べないで有罪と書けば、上告されて破棄差し戻しとなる危険性がある。自分は甘いかもしれないが科捜研の鑑定で有罪とは書きづらいのではないか」と述べました。

第26次裁判所要請行動を行いました

 10月30日 第26次の裁判所要請行動を16名で行い、署名3593筆を提出しました。累計は5万2千172筆になりました。参加者からは以下のような発言がありました。
 「病室の状況から、女性患者の訴えはせん妄によるものである事は明らか。ぜひ現場を見てほしい」「患者が手術後にせん妄状態になることは特別珍しいことではない」「医師の逮捕は民医連の病院に対する弾圧の側面がある」「本人や家族の心身のストレスは耐えがたいものがある。はやく安心して生活できる状態にしてほしい」「袴田事件では裁判所は捜査機関の捏造を認めた。裁判所が冤罪に加担するようなことはあってはならない」
 裁判所要請行動はこれからも毎月続けていきます。引き続き署名活動にご協力ください。

差し戻し審の公判が始まりました

第1回公判の報告 2024年9月18日


東京高裁805法廷で差し戻し審の第1回公判がありました。傍聴席42席の805号法廷で行われます。家族や報道関係者の席が確保されているので抽選で傍聴できるのは28席でした。傍聴券を求めて約100名が並びました。

第1回公判は弁護側・検察側双方が意見陳述をするものと聞いていましたが検察は書面のみの提出でした。

弁護側は30分を希望していましたが裁判所の意向で15分間口頭弁論を行いました。高野主任弁護人は「一度しか測定していない、しかも書き換えた跡があるワークシートしか残っていないDNA定量検査で人を有罪にしてよいのか。その分野の専門家の間で信頼できるものとして認められる水準のものなのかを明らかにする。」と陳述しました。

双方から出ていた証拠申請を裁判所は留保しました。

場所を移動して報告集会を行い弁護団から5名、全体で40名以上が参加しました。高野主任弁護人は口頭陳述の重要性について「傍聴人が何をしているかわからないような手続きでは公開裁判の意味がない。書面しかみていない裁判官にも理解してもらうためだ」と説明。触診でも大量のDNAは付着すること、ワークシートも調査するよう証拠申請してはいるが、迅速に無罪判決を確定させるために、弁護団としては2人の証人尋問に全精力を集中させたいと報告しました。

 参加者から「刑事裁判で重要なのは真実の解明であるはず。差し戻し審では全く不毛なことをしている。真実の解明は行わないのですか?」との質問がありました。高野弁護士は「差し戻し審は最高裁の出したポイントに拘束される。不毛であってもDNA定量検査の数値が正しいかどうかを検討しなくてはならない。もちろん必要な手続きをやったうえで、真実が何かを明らかにする」と答えました。また「100名以上の大法廷で行うべきではないか」との質問には「私たちも要求はしたが、東京高裁から部屋を借りることが出来なかったとの返事だった」そうです。今後の私たちの裁判所要請行動でも広い法廷を要求をしていきたいと思います。

第2回公判の報告 2024年10月9日

雨天でしたが開廷前に街頭宣伝を行い短時間でリーフレットを 50 枚以上配りました。今回の証人尋問は検察推薦の京都府立医科大学法医学教室教授の池谷博氏です。池谷証人は警視庁科学警察研究所に 2005 年から 3 年間勤務した経歴があります。前回と同じ 805 法廷で開かれ一般傍聴席は32席でした。傍聴券を求めて 106 名が並びました。

証人尋問の具体的な内容

  1. 科捜研が実際に使用した機器スマートサイクラーⅡとヒトゲノム定量キットを用いた DNA 定量検査でどの程度の精度、バラつきがあるかについて。連続した4日間の日間変動、1日5回測定した日内変動、日間変動では 3 名の検査者で同じ検査者で最大 3 割程度、異なる検査者の比較では平均 2 割程度、日内変動では同じ検査者、異なる検査者でそれぞれ最大4割程度の誤差が生じた。
  1. あらかじめ作成していた検量線を使用することで、どの程度の誤差が生じるのかについて。各検査者が初日に作成した検量線を使用して残りの 2 人の測定結果を当てはめて定量値を計算したところ平均4割から5割の誤差が生じた。ただし測定は様々な条件、室温や湿度、検査者の手技、マイクロピペットを強く押すか弱く押すか、目盛りの回転させる方向、ミキシングの方法、機器のコンディション、等々で誤差が発生する。

今回使用したDNA定量試薬は警察にのみ販売されている。試薬の誤差をメーカーは教えてくれない。検査センターや病院の検査室が行っている第3者による外部精度管理を科捜研はやっていない。当初唾液で DNA 定量をするつもりだったが測定値が小さすぎて断念。唾液採取キットのフィルターに吸着された可能性があるが確認はしていない。検査者の頬の粘膜を綿棒で拭ってサンプルとした。自分を含む3名で行ったが 1 名は途中で老眼が酷いから(良いデータが得られない)と辞退したので別の人と交代した。検査者はこの装置を使い慣れていなかったが、科捜研であれば毎日使っている装置なのでより精度が高いデータが出たはずだ。今回3名の平均値や標準偏差を計算したが数が少なくて統計学的な意味はない。ワークシートを鉛筆で書いたり消しゴムで消したりするやり方は適切ではないが、それをもって測定結果が信用できないということにはならない。

公判終了後場所を移動して報告会を開きました。弁護団から 7 名、合計約 30 名が参加しました。

差し戻し審の公判期日が確定しました

第1回公判 2024年9月18日(水)15時 ~ 
第2回公判 2024年10月9日(水)13時30分~                       
第3回公判 2024年10月28日(月)14時~ 
 
              
 法廷はすべて東京高裁805号法廷(席数は42席)。傍聴券は抽選になります。通常は開廷の30分から40分前に裁判所の指定した場所に来られた方を対象に抽選します。指定場所、抽選時間はこの原稿を作成している時点ではまだ公開されていません。第1回公判は弁論更新手続で、第2回・第3回公判は専門家証人尋問です。

2024年5月30日の決起集会の報告

 2024年5月30日の決起集会「東京高裁(差し戻し審)で無罪を確定させるつどい」は会場に113名、オンライン26カ所の参加がありました。弁護団から主任弁護人の高野隆氏が「差戻控訴審について」と水沼直樹弁護士が「精度管理・DNA」を報告。裁判の見通しと「科捜研のDNAの測定方法はズサン」「女性患者にDNAが付着する可能性が非常に高い」ことが詳しく分かりました。 

 とりわけ、「人は顔を触る」という論文を多数見つけて、外科医師の取り調べ画像で顔を触る数を数えた等の緻密な取り組みに、驚きと感動の声が上がりました。外科医師の母が渾身の力で発言し、大きな拍手が湧きました。会場でカンパが18万円余り集まりました。

いただいた質問にお答えします
a) 8/25逮捕され釈放されるまでの103日間(原文ママ)、外科医師と警察の間にどのようなやり取りがありましたか。
⇒ 警察は事件が起きてから外科医師を尾行して、自宅のゴミをあさりDNAを回収していました。逮捕勾留後は容疑を認めるよう強要されたが、外科医師は黙秘を続けました。

b) 病院スタッフが口裏合わせをしている?と言ったのは誰で、どんな理由からそのような発言、疑問を持たれたのですか。
⇒ 一審で検察が、八巻医師、看護師は病院関係者であるから虚偽の証言をする動機があり、信用できないと主張しましたが、裁判所は検察の主張は具体的な証拠に基づかない憶測にすぎない。各証言が詳細な点が異なっていても、前提事実と整合しない点は無くむしろ自然で、同室患者の証言も含めて信用できるとして、検察の主張を排斥しました。

2024年5月30日の決起集会の報告

 2024年4月22日の北千住駅宣伝には28人参加。1時間でリーフ100枚を配れ、署名40筆の協力があるほどの好反応でした。「外科医師の元患者。心配している」という激励もありました。

 2024年6月14日には高裁前で宣伝(11人参加)。1時間でリーフ100枚以上配り、1万円のカンパを頂きました。

4月22日 北千住駅宣伝
6月14日 東京高裁前宣伝

署名4万筆を提出

勝利のために、いっそうご支援をよろしくお願いします

 外科医師を守る会会員のみなさん、支援者のみなさん。日頃のご支援に、あらためて心より感謝申し上げます。HPの更新が出来ずにいたことを、お詫び申し上げます。

 2022年2月の最高裁判決から、2 年が経ちました。この間、弁護団・検察・裁判所による「進行協議」(非公開)が行われてきました。弁護団は、来たる公判に向けて、専門家によるDNA鑑定や意見書作成など万全の準備をすすめています。進行協議も、いよいよ大詰めです。

 最高裁は、二審の実刑判決を破棄はしましたが、検証不能なDNAの鑑定結果で有罪にする道を示しました。そのため、差戻審は全く楽観できません。また2023年8月には、裁判長が近藤宏子氏から齊藤啓昭氏に代わりましたが、齊藤氏が最高裁上席調査官の時にえん罪・大崎事件で異例の再審請求棄却がされており、決して油断できない状況です。最高裁では、10万筆を上回る署名を提出し、皆様のおかげで二審・実刑判決を破棄することが出来ました。無罪を勝ち取るためには、最高裁のときを上回る運動が必要です。署名とカンパのご協力を、どうぞよろしくお願いします。

2024年2月21日 第18次裁判所要請

 外科医師を守る会は、毎月の要請行動を実施し、署名を提出してきました。また、参考になる書籍や文献なども提出。「本件のDNA保管方法が警察庁の内部通達に違反している」ことを示すために警察公論も提出しています。2024年3月21日の第19次要請で累計40651筆の署名の提出となり、4万筆を超えました。また、宣伝や集会などでの訴えも強めてきました。

 2023年9月14日には、北千住西口に18人で駅頭宣伝を行いました。「ずっと、気にしてました」と署名してくれる方もおられました。

2023年9月14日 北千住駅で署名・宣伝

5月30日 第9次高裁要請を行いました

 2023年5月30日、東京高裁へ第9次の要請行動を行いました。14名が参加して署名598 筆を提出しました。累計は3万1千762筆になりました。今回は学術団体「法と心理学会」の学会誌2017 年号の特集記事「バイアスと冤罪」を提出しました。女性被害者や検察官が嘘を言うはずがないと思い込んでいる裁判官がいます。最初から被告人を犯人と決めつけ、恣意的に証拠を解釈して冤罪が作られています。

参加者からは以下のような訴えがありました

・病室は事件が起きるには到底あり得ない環境でした。これまで医師は無罪だという多くの方の賛同があって5 月1 日のメーデーでも多くの人に訴えさせていただき、殆どの人があり得ない話だと分かってくれました。性犯罪には常習性言われますが、外科医師はこれまで多くの女性患者の手術を行ってきて、一度も訴えられたことはありません。裁判所は適切に判断して一日も早く無罪にしてください。
・私は以前病院で看護師をしていて、せん妄の患者を多く見てきました。全身麻酔の手術から30分ほどしか立っていない患者の言動で医師が逮捕されるなんて考えられません。手術直後は看護師が頻繁に世話で出入りします。わいせつ行為があり得ない環境であることは病室で働いている職員ならすぐわかります。
・検察は無理なDNA鑑定を押し付けてきました。科捜研は科学的根拠のない杜撰な鑑定をして一審では無罪になりました。公正な裁判で早く無罪を確定させて、外科医師の名誉を回復させてください。
・長年看護師としてその後はケアマネとして医療の現場で働いてきました。この事件を身近に感じています。データを削除したり検体を廃棄して第三者が検証できなくなりました。診察をすれば舐める以外にもDNAは付着します。科学と呼べない証拠で有罪にするなんてあってはならないし、医療の現場が委縮して患者さんが不利益を被ることになります。医療現場で働く人達は注目しています。ぜひ公正な審理をお願いします。
・全くあり得ない事件だと思います。外科医師を助ける為に私にできることは何かと考えて
周りの人達に声をかけて署名を集めています。ぜひ速やかに正しい判断をしていだいて無罪判決を出してほしいと思います。
・乳腺外科医事件は医師が逮捕されたときから関心がありました。本人はもとより、家族の苦しみは想像を絶するものだと思います。一刻も早く公正な審理をお願いします。
・ある日突然普通の生活が奪われてしまったことを思うと、心が痛みます。私も7年間弁護士さんの話を聞いたりして、この事件は常識的にあり得ない話だと思います。ぜひ無罪判決をお願いします。

 今回提出した学会誌の記事「天文館強姦被告事件の予断」では、科捜研のDNA鑑定は抜本的な変革が必要だと述べています。当該事件で科捜研は検証に必要なデータを消去してDNAは定量できなかったと報告しました。一審の裁判官は検察の主張を盲信して懲役4年の有罪判決を言い渡しました。しかし2審の鑑定で被告人とは別のDNA型が検出されて、福岡高裁は科捜研によるデータ隠しまで疑って無罪判決を言い渡しました。
 2016年1月、この事件の反省から警察庁はDNA鑑定の記録保存などを見直す通達を出しました。ところが同じ年の6月に起きた乳腺外科医師事件では、科捜研はこの通達を無視して反省は生かされませんでした。警察の一部門である科捜研には有罪にするために証拠を捏造する動機が常にあるのです。科捜研の鑑定には当然第三者による検証が求められてしかるべきです。

4月14日、「東京高裁(差し戻し審)で勝利をめざすつどい」を開催

 4月14日、「東京高裁(差し戻し審)で勝利をめざすつどい」を北千住会場とオンライン併用で開催し、約90名が参加しました。最高裁で差し戻し判決が出されて約1年。公判が開かれていない中、外科医師の主任弁護人である高野弁護士が参加のみなさんへ裁判支援のお礼を述べるとともに「改めて事件を振り返りましょう」とこの間の裁判経過を辿りました。

4月14日 北千住会場

 検察から物的証拠として出されているのはDNA検査時の鉛筆書きで消した跡が何カ所もあるワークシートだけで、写真やDNA量を裏付ける検査基準線もない。証言でもそうした科捜研の非科学的やり方が初めて表沙汰になった。満床の多床室で物理的にもあり得ない行為、医師としての動機もないことで、1審は無罪になった。2審有罪判決は非科学的証言を採用して有罪としたが、最高裁はこれを否定し、検査の疑問点を解明しろと差し戻した。しかし、検察は裁判争点になっているのに検体を捨ててしまい「再検証は不可能」となり、自ら科学を否定している。なぜそこで無罪とならないのか?司法で科学の常識が通ることを願っているし、最後まで諦めないと語りました。高裁の現状についても、現在は非公開の会議が続いており、公判日程は未定。検察は、DNAに関すること以外に、「せん妄」についても主張している。弁護団は、一審以上に精緻な実験や検証をしようとしていると報告しました。
 外科医師を守る会呼びかけ人である救急現場の医師が、現場で「せん妄」が実にたくさんあると紹介し、それで有罪とされるなら国民の命や健康へ影響が及ぶと訴えました。外科医師のお母様も「私は絶対に諦めません」と力強い訴え、万雷の拍手が起こりました。最後に会から①署名を広げる、②実験のためのカンパの協力、③リーフを活用して、事実を多くの人に知ってもらう、④会への入会のお願い、⑤集まりや記事などで事件を訴える機会を提供して欲しい、の5つのお願いを行いました。引き続き、更なるご支援ご協力をお願いします。