2月18日14時30分から外科医師裁判の最高裁判決がありました。一般傍聴席は19席しかありません。傍聴券を得るために抽選に219名が並びました。寒い中、ありがとうございました。最高裁判所の前に立って感じるのは、巨大な石造りの要塞のような外観、公平・平等な裁判とは対照的な、俺たちは偉いんだと言わんばかり圧倒的な威圧感です。器に負けないくらいの立派な判決をお願いしたいものです。
たとえ最高裁判所判事の任命は内閣総理大臣であっても、三権分立をまもり、権力の意向を忖度しない裁判所を国民は求めています。この裁判の裁判長である三浦守判事が検察出身であることは気になります。弁論を行ったという事は、最高裁が高裁の有罪判決をこのまま認めるわけにはいかないと、意思表示したわけです。高裁判決が破棄されれば、最高裁は無罪判決を出すか、高裁へ差し戻すしかありません。しかし、女性患者がせん妄の状態にあったかどうかは、複数の専門家により肯定されており、せん妄の専門家ではないという証人の意見を論ずるまでもありません。もう一つの争点であるDNA、アミラーゼの科学的証拠の扱いについては、科捜研が記録の書換え、データの削除、DNA抽出液の廃棄を行い、正しいかどうかも評価ができない状態です。最高裁は無罪判決を出したうえで、科学的な証拠の取り扱いについて明確な基準を示すべきです。そして科学(本当か本当でないか)よりも一方的に検察側に重きを置く裁判官の偏った考えを見直すべきです。
第2小法廷の様子ですが、法廷に入ると、ドームのような高い天井と正面に5席の椅子があります。観音開きの扉が自動で開いて、4人の判事が入ってきます。まさにセレモニーです。
左から岡村和美判事、菅野博之判事、裁判長である三浦守判事、菅野博之判事がすわり、右端は空席です。最高裁は15名の判事が三つの小法廷を分担しますが、大谷直人最高裁判所長官は数に入っておらず、第2小法廷だけは4名です。判事が全員着席すると、すぐに三浦裁判長から判決が読み上げられました。「高裁判決を破棄し、高裁へ差し戻す。」私たちが期待していた最高裁の無罪判決ではありませんでした。すぐに私は旗出しのために席を離れました。
判決文の読み上げ後に、弁護団は記者会見・支援者集会の会場に移動しました。高野主任弁護人は外科医師と家族にこれ以上の負担を負わすことは非人道的であると最高裁の差し戻し判決を批判しました。また最高裁は無罪判決を書けるのになぜ差し戻したのか理解できないと述べました。最高裁は、高裁の女性患者が覚醒していたとの判断は、一般的な診断によるものではない否定しましたが、DNA・アミラーゼについては審理がつくされていないと差し戻しました。しかし犯行を証明する責任は検察の側にあり、検察が証明できなければ無罪判決をだすべきなのです。一方で弁護団が求めていた科学的証拠の取り扱いについては、基準を示すことは一切ありませんでした。判決は4 人判事の一致した意見でした。
なぜ最高裁は、裁判の証拠に科学の作法を義務付けないのか。およそ科学とは言えない現状の鑑定を放置するのか。最高裁への期待は裏切られましたが、高裁へ差し戻しとなったからには無罪判決をかちとるまで、私たちは全力で取り組みますので、引き続きご支援・ご協力をよろしくお願いいたします。
記者会見、支援者集会の中継について、一部不手際がありましたことをお詫びします。
2022 年2 月20 日 外科医師を守る会 事務局