12月13日、高裁へ署名提出と要請を行いました

 東京高裁へ差し戻し審の第4次要請行動を9名で行いました。署名5,760筆を提出しました。差し戻し審の署名の総数は2万783筆となりました。

 さらに今回「冤罪白書2022・燐燈出版」と「日本の法科学が科学であるために・現代人文社2021年」の二つの文献を提出しました。

 「冤罪白書」は、冤罪を叫ぶ人の声を裁判所に届けるため出版されました。2019年から毎年発行され今年で4冊目です。本号で、外科医師裁判の弁護団である趙誠峰弁護士によって、上告審の問題点が克明に書かれています。最高裁では、弁護団は科学的証拠の許容性について明らかにするよう要請しました。専門家でない証人の証言を証拠として許容できるのか。再現性・検証可能性を一切残していないDNA定量検査は証拠として認められるのか。ところが最高裁は、これらを自ら判断することなしに、高裁へ差し戻しました。最高裁判決は、検察にチャンスを与え裁判を長引かすものであり、推定無罪の原則に反します。被告の外科医師にとって非人道的です。

 巻末には、水野智幸氏(法政大学教授・元裁判官)によるこの事件の地裁判決・高裁判決の比較検証が載っています。科学的証拠についてのスタンスの違いが結論を分けたと分析しています。(※法科学とは科学捜査研究所・科学警察研究所による科学鑑定をいいます)

参加者からの高裁への要請概要

・9月に弁護士を講師に学習会を行い約50人が参加しました。参加者の多くが、病室で犯行はあり得ないと疑問に感じていました。当時麻酔に使われたプロポフォールは、一般的な麻酔薬ですが、性的幻覚を見やすいと言われています。女性患者の証言が信用できなければ、外科医師は無実です。この事件はもう6年経ちます。裁判所は審理を進めて一日も早く無実の判決を出してほしい。

・外科医師と家族は人生を壊されて、とても苦しんでいます。この事件は麻酔によるせん妄以外の何物でもありません。裁判所にはとにかく審理を尽くして、1日も早く助けてほしい。

・柳原病院には健診でお世話になった。この事件を知って、何としても外科医師本人や家族を苦しみから解放させたい。私にできることはこの事件の酷さを周りに知ってもらうことと、署名に協力してもらう事。一審で無罪が出たのに、新しい証拠が出たわけでもないのに、なぜ有罪になるのか理解できない。

・科捜研は、抽出液を破棄してもガーゼが残っているというが、中央部の灰色の部分を切り取って鑑定につかって、周りの色が変わっていない部分では再鑑定をする意味がない。しかもガーゼは冷凍ではなく室温で保管されている。この事件本質は、わいせつ行為をされたという女性患者の証言が信用されたことが大きい。しかし実際の病室でわいせつ行為は実現可能なのか。カーテンのそばに母親。女性患者から外科医師の下半身は見えない。裁判所は現場検証をするべきです。一方、看護師の証言は病院関係者だから信用できないとは・・・公平に審理をしてほしい。

・麻酔の手術でせん妄が起きるという事をこの事件で知った。自分自身は2度麻酔の手術を受けたことがあるが、最初はとても痛かったが2度目はいつ終わったのか分からないくらい痛みは無かった。年数を経て医学が進歩したのかもしれないけれど、麻酔は怖いと感じた。

・DNA定量の検量線が捨てられたことについて、決まっている濃度のものを測ってその値が出るという証拠が検量線。検量線がなければ測定値を保障するものが無いただの数字でしかない。ところが科捜研の技官は、検量線を捨てたことをについて、何が悪いんですかくらいの態度だった。分析を行っている者として、自分が出す値の根拠を消してしまう行為はあり得ない。

・大勢の眼があっても、わいせつ事件が起きることはあります。それは被害を受けている女性に対して、周囲の関心が向いてないからです。ところがこの事件は違います。同室の斜向かいのベッドの患者は女性患者が気になって覗いていたと証言しています。術後のケアで看護師が頻繁に出入りして、女性患者に注意を払っていました。何か起きればすぐに騒ぎになる状況であることを、医師であれば理解しています。

9月13日、署名提出と要請をしました

 9月13日、差戻審の第3次要請行動を行いました。8名参加7,415筆の署名を提出しました。署名の累計は15,023筆となりました。今回は以前に作成したQ&Aパンフレットと、一編の論文(本庄武 刑事手続きにおける科学鑑定の現状と課題  一橋法学2017〔16〕第1号1~21)を提出しました。

 参加者からは、以下のような発言がありました。

 多くの医療従事者にとって、この病室の状況で、わいせつ行為は不可能なことは理解できます。では実際の検察が出した証拠はどうだったかと言えば書き直した跡があるワークシートや、検証ができないDNA鑑定など信用することは出来ません。本日提出した論文には「捜査段階で科捜研が行う鑑定は、有罪仮説を立証する目的で行われるので中立性に限界がある」「鑑定の信頼性を確保するためには科学的な検証可能性が必要」とあります。有罪にするためのバイアスがかかっている前提の科捜研の鑑定は、科学的検証なしに採用すべきではありません。

 裁判を傍聴しました。検察官のやり方を聞いていて、自分の考え方と違うという事がものすごく多かった。そういう意味では検察は一般常識から反したやり方をやっている。裁判所は、もう少しよく見てもらいたいと思います。

 自分の入院の経験から、あり得ない事件だと感じました。先生や看護師さんたちは突然カーテンを開けて入ってくる。ある意味病室は開放的です。いつ誰が入ってくるかわからない。術後30分といえば真剣に対応をしなくてはならない時間帯。その時にわいせつ行為をやろうなんてありえない。せん妄という言葉を今回初めて知りましたが本当にそうだったんだと思います。ぜひ常識的な判断をお願いします。

 義理の母の手術のときにせん妄を目の当たりにしました。母は病室の壁に、私の一番嫌いな蛇が見えると言いました。「ここにいる、ほらっ」と目の前の私に真面目に話すので、せん妄は本当にあるんだと実感しました。医師は手術をした後も患者に対して責任があります。手術の後に患者の状態が悪くなるようなことを医師自ら、するはずがありません。

 素人からみてもあり得ないこと、おかしな裁判だと思う。科学に基づいて正しい裁判をしてほしい。私は柳原病院で健診を受けていた。その病院の先生が、幸せな家庭だったはずが突然地獄につき落とされてつらい目に合っているのを思うと、無罪になるまで自分なりにできる支援を続けたい。

 Q&Aパンフレットは、デマ情報や誹謗中傷がネットを中心に蔓延っていたので、明らかになった事実、フェイクニュースに対する反論等をまとめたものです。末尾には、せん妄を知っていただくのに役立つと思われるせん妄の体験談を載せました。「冤罪を主張して、女性の尊厳を軽んじていませんか」という問いに対して、女性が性被害を受けてもその事実を封殺する社会の実態があります。これは女性差別です。しかし実際と合わない女性の証言を認めることは女性を利用しているだけで寄り添うことにはなりません。事実を明らかにすることこそが、女性をトラウマから解放し女性の尊厳を守ることだと思っています。

 要請行動は、これからも定期的に行っていきますので、引き続き署名活動にご協力をお願いいたします。

差し戻し審、高裁に署名を提出

6 月 16 日

 2,005名分の署名を提出しました。要請ではそれぞれに、未だに裁判が続くことへの怒りと無罪判決への思いを語りました。また、6月に浜松で開催された日本医療安全学会学術総会の抄録も提出。この総会では本件のシンポジウムがあり、医療関係者に大きな関心を持たれていることも報告しました。

 →署名用紙はホームページの「署名・パンフレット」タグよりダウンロードできます。


7 月 25 日

 5,603名分の署名を提出しました(累計7,608名分)。今回は、外科医師の叔父様とお母様のご友人が参加。えん罪で苦しみ続けている外科医師と家族の様子を、切々と訴えました。本件に心を痛めて精力的に支援する地元の方は、「『私に出来ることは何か』と考えて、署名を集めている。事件を伝えると、皆が驚き怒り、署名に協力してくれる。それで終わらず、署名を集めてくれる人もたくさんいる」と話しました。

 また今回は、科捜研の問題点を指摘している論文を提出しました。執筆者は、科捜研研究員が社会に対して科学者としての責任を負っているにも関わらず、裁判所の過度の信頼や捜査機関の有罪仮説を重視する期待によって「歪み」が生じ、閉鎖的で科学の規範にそぐわない鑑定が行われている点を問題視しています。

 差し戻し審は、最高裁判決に縛られることが予想され、場合によっては、充分な審理がされないまま有罪に持ち込まれる可能性があります。このような理不尽な企みとたたかうためには、署名運動を大きく展開し、世論を広げなければなりません。今後の要請行動も、たくさんの署名や文書・声を届けて成功させる決意です。裁判官に、事件への真剣な関心が広がっていることを伝えるために、一層のご支援をお願い致します。

4月15日、差し戻し審で完全無罪を目指す決起集会を開催しました。 

 4月15日、18時半より北千住にて「乳腺外科医師えん罪事件 高裁の有罪判決は破棄!差し戻し審で、完全無罪を目指す決起集会」を開催し、会場とオンラインで約100名に参加頂きました。

 守る会呼びかけ人の八巻医師が「術後に仕事があるからと頼まれ、私たちはいつも以上に気をつかって手術をした。術後戻った病室は4人部屋で、隣のベッドとは薄いカーテンで仕切られているだけ。術後管理のためにベッドは一番高く、ベッド柵もあった。看護師も頻繁に出入りしており、患者の母親もすぐ脇にいた。その中で患者さんの胸を舐めるなどできようはずもないし、一審判決でもそのように言われている。外科医師本人や家族が辛い思いをし続けている。はっきりと無罪にするために、力を貸して欲しい」と開会のあいさつを述べました。

 弁護団から主任弁護人の高野隆弁護士が、最高裁判決に関して1時間ほど説明を行いました。高野弁護士は「最高裁判決は、有罪破棄だからせん妄の可能性があるという弁護側の言い分を認めたことは間違いない」と評価しつつも、「最高裁判決の中身を見ると楽観は許されない」と訴えました。

 最高裁の判決では「専門的知見等を踏まえ、本件定量検査に関する上記の疑問点を解明して本件定量検査の結果がどの程度の範囲で信頼し得る数値であるのかを明らかにするなどした上で、本件定量検査の結果を始めとする客観的証拠に照らし、改めてA の証言の信用性を判断させるため、本件を東京高等裁判所に差し戻すこととし、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する」と記述されています。高野弁護士はこれについて「DNA定量検査における、定量値の信頼度が認められるならば、有罪になる可能性もあるというのが差し戻しの意味」と指摘しました。そして「最高裁判決は検察に3 回目のチャンスを与えるということ。こんなことが許されるのか、というのが素朴な疑問だ。検察は膨大な予算があり、科捜研という全国組織の協力を得られる。一方、我々は一市民であり、皆様の支援によってここまでやってきたが、3 回も勝たないとえん罪から逃れられないというのがこの国の司法」と告発しました。

高野主任弁護士

 そして裁判で明らかになった科捜研の検査記録を改めて示しながら、「PCR検査の検量線やアミラーゼ検査の判定写真もなく、9 箇所も消した跡がある鉛筆書きのワークシートしかない。DNA抽出液、増幅曲線は廃棄されており、検査のプロセスが検証できない。ヒューマンエラーは避けられないはず。間違いがあることが問題なのではなく、間違いがあったかを検証できることが大事。こんな証拠でいいのか」と指摘するとともに「私どもはこの土俵で闘うことも必要だが、事件の本質はここにはないと思う。1.612ng/μℓのDNA量が正しいとしても『舐めた』ことを証明しない。弁護側の検証実験でも唾液の飛沫や触診により付着した可能性があることが示されている」と解説し、無罪を確定させるために奮闘するとともにさらなる支援を訴えました。

 最後に守る会の野田事務局から、当面のみなさんへ以下の4点、

1,高裁向けの新たな署名にご協力ください。

2,無罪を勝ち取るための、支援基金へご協力ください(DNA検証実験などをやるとなれば、かなりの費用が必要となるとともに外科医師と家族の生活を少しでも応援したい)。

3,外科医師を守る会への会員登録をお願いします。

4,事件内容や裁判争点を知ってもらい世論を広げるために、集会の開催や各種のあつまりでの訴えの場を設定してください。

 と引き続き、ご支援・ご協力のお願いをさせて頂きました。

最高裁 報告

 2月18日14時30分から外科医師裁判の最高裁判決がありました。一般傍聴席は19席しかありません。傍聴券を得るために抽選に219名が並びました。寒い中、ありがとうございました。最高裁判所の前に立って感じるのは、巨大な石造りの要塞のような外観、公平・平等な裁判とは対照的な、俺たちは偉いんだと言わんばかり圧倒的な威圧感です。器に負けないくらいの立派な判決をお願いしたいものです。

 たとえ最高裁判所判事の任命は内閣総理大臣であっても、三権分立をまもり、権力の意向を忖度しない裁判所を国民は求めています。この裁判の裁判長である三浦守判事が検察出身であることは気になります。弁論を行ったという事は、最高裁が高裁の有罪判決をこのまま認めるわけにはいかないと、意思表示したわけです。高裁判決が破棄されれば、最高裁は無罪判決を出すか、高裁へ差し戻すしかありません。しかし、女性患者がせん妄の状態にあったかどうかは、複数の専門家により肯定されており、せん妄の専門家ではないという証人の意見を論ずるまでもありません。もう一つの争点であるDNA、アミラーゼの科学的証拠の扱いについては、科捜研が記録の書換え、データの削除、DNA抽出液の廃棄を行い、正しいかどうかも評価ができない状態です。最高裁は無罪判決を出したうえで、科学的な証拠の取り扱いについて明確な基準を示すべきです。そして科学(本当か本当でないか)よりも一方的に検察側に重きを置く裁判官の偏った考えを見直すべきです。

 第2小法廷の様子ですが、法廷に入ると、ドームのような高い天井と正面に5席の椅子があります。観音開きの扉が自動で開いて、4人の判事が入ってきます。まさにセレモニーです。 
 左から岡村和美判事、菅野博之判事、裁判長である三浦守判事、菅野博之判事がすわり、右端は空席です。最高裁は15名の判事が三つの小法廷を分担しますが、大谷直人最高裁判所長官は数に入っておらず、第2小法廷だけは4名です。判事が全員着席すると、すぐに三浦裁判長から判決が読み上げられました。「高裁判決を破棄し、高裁へ差し戻す。」私たちが期待していた最高裁の無罪判決ではありませんでした。すぐに私は旗出しのために席を離れました。

 判決文の読み上げ後に、弁護団は記者会見・支援者集会の会場に移動しました。高野主任弁護人は外科医師と家族にこれ以上の負担を負わすことは非人道的であると最高裁の差し戻し判決を批判しました。また最高裁は無罪判決を書けるのになぜ差し戻したのか理解できないと述べました。最高裁は、高裁の女性患者が覚醒していたとの判断は、一般的な診断によるものではない否定しましたが、DNA・アミラーゼについては審理がつくされていないと差し戻しました。しかし犯行を証明する責任は検察の側にあり、検察が証明できなければ無罪判決をだすべきなのです。一方で弁護団が求めていた科学的証拠の取り扱いについては、基準を示すことは一切ありませんでした。判決は4 人判事の一致した意見でした。

 なぜ最高裁は、裁判の証拠に科学の作法を義務付けないのか。およそ科学とは言えない現状の鑑定を放置するのか。最高裁への期待は裏切られましたが、高裁へ差し戻しとなったからには無罪判決をかちとるまで、私たちは全力で取り組みますので、引き続きご支援・ご協力をよろしくお願いいたします。
 記者会見、支援者集会の中継について、一部不手際がありましたことをお詫びします。

        2022 年2 月20 日 外科医師を守る会 事務局

最高裁が有罪破棄、差し戻し判決

 第一報です。2月18日、最高裁判所第二小法廷(三浦守裁判長)は、乳腺外科医師えん罪事件において、東京高裁の有罪判決を破棄して、差し戻し判決を出しました。外科医師の高裁での無罪確定に向けた重要な一歩です。

 全国のみなさんのこれまでのご支援に心から感謝申し上げるとともに、差戻し審での無罪確定のため、引き続きのご支援をお願い致します。

 判決日の午前中には、極寒の中、最高裁判所の西門にて、この事件はえん罪であること。最高裁は事実と科学に則った公正な判断で、外科医師に無罪を下して欲しいと訴えました。その後、宣伝参加者は、傍聴券を求めて南門前に並びました。219人がコロナ禍により19席に限られた傍聴席を求めて並んでいました。

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2月16日、最高裁へ要請しました

 判決日である2月18日の直前、判決前最後となる最高裁要請をしました。提出署名は9,853名分累計100,091名分・34団体、目標の10万筆!を超えることが出来ました。皆さんのご支援のおかげです!ありがとうございました。また、ネット署名も(累計3,128名分)提出。「高裁判決に対する日本医師会、日本医学会の声明に賛同する医師の会」への賛同医師数が716名になっていることも報告しました。

 昼には、最高裁の西門前で宣伝もしました。横断幕が目立ち、配布したQ&Aの受け取りも良く、元気をもらいました。いよいよ2月18日に判決です。当日も昼から訴えを行います。最後まで頑張りますので、引き続きよろしくお願いします!

1月21日 最高裁傍聴報告

 最高裁第二小法廷(三浦守裁判長)は1月21日、弁護側、検察側双方から意見を聞く口頭弁論をおこない結審しました。正確には公判という手続きですが、一般的にマスコミも弁論と呼んでいるので、そのままの用語を使用します。最近は傍聴者に事件の要旨を配ることもしているようですが、最高裁に問い合わせたところ、全部の事件ではなく、今回は配らないとの返事でした。
 弁論は、高裁の有罪判決を見直す際に必要な手続きです。最高裁で無罪判決が出る可能性があります。ここまでくることが出来たのは、弁護団の努力はもちろん、支援者の皆さんのおかげです。心より感謝申し上げます。わずか19席の一般傍聴席を得るために171人が並びました。寒い中、ありがとうございました。

弁護団の弁論の要旨
 弁護団はこれまでに上告趣意書、4通の補充書、各方面の第一線の専門家の意見書を提出しています。高野隆主任弁護人は12名の弁護団を代表して、以下のように意見を述べました。
科学捜査研究所の鑑定が科学の世界の作法・常識を一切無視して行われていること。検察側の精神科医が医学で用いられている診断基準を用いず、独自の説でせん妄を否定していることに対して、科学・医学を冒涜するもので証拠として採用してはならないとこと。STAP細胞の事件を例にだして、自分達がちゃんとやったと言っても第3者の検証に耐えなければ科学的な鑑定とは言えないこと。最高裁は一歩進んで足利事件で示した「科学的に信頼できる方法」とは何かを示すべきだと述べました。最後に、「不正義をただすのは最高裁の皆さんしかいない」と訴えて弁論を終えました。

検察側の弁論の要旨
 一方の検察は、女性の訴えが現実世界の出来事なのか、頭の中だけの幻覚なのか、現実の出来事であれば関係者の証言によって裏付けられると主張しました「女性の記億は鮮明であり、関係者の証言によって現実世界でおきた出来事であることが証明された。彼女はせん妄状態ですらなかった。彼女がせん妄であったかどうか、科捜研の鑑定が科学的かどうかは些末の問題だ。」と言い切りました。
この検察の主張は科学的にも誤りですし、高野弁護士が正さなければならない二つの大きな争点だと言った後に、都合が悪ければ些末の問題にして問題をすり替えようとする、心に響かない弁論でした。地裁で裁判が始まって6年目を迎えますが、検察官のせん妄についての理解は1ミリも進歩がないことがわかりました。

 なお、弁論終了後に近隣の施設で記者会見を兼ねた支援者向けの報告会を開催しました。感染対策上から同時にオンライン配信も行い、合計で約100名が参加しました。

1月14日、最高裁へ要請しました

 1月14日、第16次の最高裁要請行動を行いました。
 朝 8 時 30 分から街頭宣伝、要請行動は10時から外科医師の事件で7名と、もう一つ事件で合計10人が参加しました。今回個人署名4,818筆を提出しました。個人署名の累計は9万筆を超えました。
 もう一つ事件で参加された方は、関西で発生した強盗事件の犯人にされて有罪判決を受け、裁判のやり直しを求めて戦っています。二人組の犯人の一人は逮捕され共犯者は別人であると証言しており、現場に残された証拠もそれを裏付けているにもかかわらず、刑事事件で一度有罪判決を受けると、それを覆すことが事実上困難であることを示すもので、こちらの事件も本当にひどい話です。えん罪は犯人にされた人や家族を不幸にするばかりでなく、真犯人が野放しになり、被害者の救済だけでは済まされない問題です。 

参加者から
・最高裁は、刑事裁判における科学的証拠についての判断を示してほしい。科捜研の鑑定のいい加減さはこの事件にとどまらない。鑑定試料の再鑑定を阻止したり、記録の原本を破棄する行為は、科学の世界では許されない行為です。科学的でないとは、事実かどうかが判断できないということ。そんな科捜研の鑑定を証拠として採用してはいけない。

・この事件で一番重要なことは、普通の感覚として病室でそのようなことが本当に起きうるのかということ。弁論を開くということは、最高裁が高裁判決は承認できないと考えたということだと思う。個人的な感覚では、東京高裁には普通の判断ができない浮世離れした裁判官が増えてきているのではないかと感じている。袴田事件の再審請求を、いとも簡単に棄却した。外科医師裁判が差戻しになれば検察は必至で結論を引き延ばすでしょう。そしてまた年月がかかる。最高裁はぜひ高裁判決を破棄して無罪判決をだしてほしい。

・外科医師もご家族も、今現在とても苦しんでいる。えん罪は多くの人を苦しめる。大変なストレスの中で体調をこわした方もおられる。本人やご家族には一日でも早く、安らかな日常を取り戻していただきたい。裁判所はえん罪で苦しんだ人たちの気持ちに正面からむきあうべきです。

・看護師が、カルテに「せん妄」と記載せずに「覚醒良好」と書いて後で「半覚醒」の状態だったと答えたことを、検察は看護師が弁護士に言われて証言を変えたと主張しています。
しかし医師ではないので、病名診断をしてはいけない看護師が「せん妄」と書くはずがありません。看護師は脈拍、血圧が正常で返事ができたので「覚醒良好」と書いたと証言しており全くおかしくありません。手術直後の「覚醒良好」が完全な覚醒の意味ではないことは医療関係者に聞けば直ぐわかることです。検察の主張は言いがかりで非常に悪質です。

12月24日、最高裁へ要請しました

 15回目となる最高裁への署名提出と要請を5人で行いました。今回は個人署名6,628筆、団体署名1筆を提出しました。累計は85,454筆となりました。(個人と団体の合計)
参加者からは次のような発言がありました。
・私は看護助手をしていたので、手術後の患者さんがせん妄を起こすことは、よくわかる。
意識が戻っても、正常の状態ではない。
・最高裁は証拠の取り扱いについて、科学に基づいて判断することを期待する。
・女性患者が言っていることが本当に起こりうる状況なのか。医療現場で起きたことを、その場にいた職員を信用しなければ、検証はできない。
・検察は飛沫の量を算出する際に、中国の論文を自分たちの都合がいいように引用しているが、計算の方法が科学的でなく数値にも誤りがある。
・11月16日の弁護団が行った記者レクチャーで、高野主任弁護人は何が事実なのかを明らかにして正しい報道をお願いしたいと述べた。デマや誤報道によって外科医師や家族は苦しんでいる。
 また今回は、判例時報2021年10月1日号と薬学雑誌2019年139 巻 5 月号に掲載された二つの資料を提出しました。 判例時報は最も読まれている法律雑誌の一つで、筆者は仮名ですが乳腺外科医事件を紹介する中で、東京高裁が最終判断に至らない程度の疑問を前提に、地裁判決の認定を非難したことを問題にしています。また残余資料の廃棄等について法律レベルで考慮することも検討に値するとしています。法律家の間でも高裁判決が問題にされているという事です。 薬学雑誌は創刊から140年目となる歴史のある学術誌で、石川県警の科捜研技官が「DNA型検査による個人識別」と題して捜査におけるDNA型鑑定の実際の方法を紹介し、鑑定に関わる者の心得として以下のようなことを述べています。

・第三者に信頼されることが前提で厳しく品質管理がされなければならない。
・資料を全量消費することは稀であり、再検査のため必要な資料を残さなければならない。
・法廷で求められたら検査内容に関しての根拠を提示し説明しなければならない。
・皮膚接触痕から得られるDNAは質・量にばらつきが大きいので、どのような資料から検出されるか画一的な見解は下せない。
 これらは弁護団の主張そのものであり、乳腺外科医事件の科捜研の鑑定は通常通りの取り扱いであり問題ないとする検察の主張とは大きくかけ離れています。論文では、「科捜研で行われるDNA鑑定は、警察庁の施設で所定の訓練を受け特別の資格を取得した者が実施し、資格取得後も一定の技術管理が行われ全国で統一されるよう品質管理が行われている」というのですから、石川県警も警視庁も品質管理に差はないと言えます。よって本事件の科捜研の鑑定は必要とされる基準を満たしていないという事が言えます。
 我国の刑事裁判は科学的な証拠よりも、裁判官が得た心象を重視して多くの冤罪を生んできました。 私たちは最高裁が外科医師の無罪判決を出すにとどまらず、科学的な証拠の取扱いついて一定の基準を 示すように求めています。それが叶えば、この裁判は歴史的に大きな意味があります。