3月1日、地検に要請書提出しました

 本日、東京地方検察庁に「乳腺外科医師冤罪事件の控訴を断念するよう強く求める」要請書を提出しました。提出数は、団体署名 436団体 および 個人署名(所属団体のみ記載) 77名分です。控訴期限は3月6日ですので、本日以降お寄せ頂いた分を来週月曜日に提出したいと思っています。引き続きご協力をお願い致します。

 検事は公判関係者以外には会わないとの事で、建物はもとより敷地の中にも入れてくれず、地検前の歩道上に出てきた担当事務官に要請書を渡しました。

要請書の表紙

控訴断念の要請書(個人用)

 団体署名ではやりにくいとの要望が多々寄せられたため、個人としての意思表示用に下記の要請署名用紙を追加しました。所属団体名として記載するようにしました。こちらもご利用ください。送付先は団体署名送付先と同じところへお願い致します。

【声明】無罪判決を歓迎するとともに検察の控訴断念を強く求めます。

 本日、東京地方裁判所刑事第3部は、無罪判決を言い渡しました。

 私たちは、大川隆男裁判長の英断を高く評します。

 今回の裁判は2016年11月の初公判以降、期日間整理手続きが14回、昨年9月から今年1月8日結審まで13回の公判が行われました。

 医師が105日間勾留後、保釈され、医師が患者の乳首を舐めた証拠として、初めてDNA量が争点となりました。裁判長は ①麻酔覚醒時のせん妄の有無と程度による患者証言の信用性 ②DNA鑑定及びアミラーゼ鑑定には科学証拠としての許容性、信用性及び証明力を主要な争点としました。

 弁護団は、女性は術後せん妄の状態にあり、幻覚を見ていたと可能性がある。DNA鑑定およびアミラーゼ鑑定についても科学捜査研究所による鑑定はずさんで手術前の診療行為によりDNAが付着した可能性があり、わいせつ行為を行った証拠にはならないと主張しました。

 しかし検察は、せん妄の影響について正面から分析することを避け、科学捜査研究所の鑑定書に至っては、警察庁の内部通達を守らず違法に作成されたものでした。このような捜査が続けられるとしたら、今後も冤罪が生まれかねません。正統な医療行為が犯罪とされるようでは命を守ることは出来なくなります

 私たちは、事件当初から無実を確信し、ご支援をいただいた全国のみなさんに、心から感謝申し上げるとともに、検察の控訴断念を強く求めるものです。

2019年2月20日

                    外科医師を守る会 

2月20日判決。判決後報告会

 2月20日(水)13時半より、東京地裁722号法廷にて判決となります。傍聴は13時から地裁入口(予定)で配布される抽選となります。また、傍聴入廷できない方に向けて地裁門前へ判決言い渡し直後に伝令が走る予定にしております。傍聴できなかった場合には、そちらでお待ちください。さらに判決法廷終了後16時半(予定)より弁護士会館5階にて、報告会を開催する予定です(弁護団メンバー到着は17時頃の予定)。

 また、3月27日(水)18時半より、判決についての報告集会開催を予定しています(下記参照)。

1月15日 公判報告会開催

会場はほぼ一杯となりました

 1月15日公判報告会にお忙しい中、そして冷え込む中、ご参加いただきありがとうございました。150名の方々にご参加いただき、会場では支援基金として約8万円の募金が寄せられ、署名500筆弱をお持ちいただきました。 弁護団からは、事件経過と公判の様子から「無罪判決でも検察側は控訴する可能性が高い」との報告がされました。また、争点になっているDNA鑑定及びアミラーゼ鑑定の信憑性について、鑑定の試料も捨ててしまい追検証もできない証拠の扱いをしている科学捜査研究所の鑑定がいかに「科学的でないか」を公判での検察側証言を引きながらわかり易く報告して頂きました。

 発言者6名の方からは、こうした証拠を基に有罪の判決が出されたら、医療現場は萎縮してしまうし、ひいては患者の不利益になる。司法が科捜研のこうしたやり方を認めることになれば、科学を標榜しながらの冤罪をさらに生むことになる。国民一人ひとりの問題でもあり、無罪判決を得なければならない。などの発言を頂きました。

 公正な審理で無罪判決が得られるよう、本事件や公判の内容を多くの方に広めて頂ければと思います(公判についてはインターネット媒体の「m3.comニュース 医療維新」で詳しく報道されています=登録必要)。

  「公正かつ慎重な審理を求める要請書」署名は判決前に提出する予定です。1月末を集約の目途としておりますので、残る短期間ですが、引き続きご協力をお願いいたします。

 初公判以降、皆さまからの支援基金は約1200万円寄せられました。DNA等の検証実験にほぼ全額使わせて頂き、現在170万円ほど残金となりました。高裁への公訴も予想される事から引き続き支援基金へのご協力もお願いいたします。

  判決は2月20日、13時半から東京地裁722法廷となります。傍聴される方は、入廷が先着順との事ですので、お早めにお越しください。

10月30日、11月1日 公判について

10月30日
 検察側と弁護側の共に麻酔科医の証人と弁護側のDNA等実験検査機関の証人でした。傍聴席はほぼ満席でした。
 検察側証人は、せん妄の可能性は低い、弁護側証拠の症例は極めて珍しいものをあげていると主張しましたが、反対尋問で看護記録や病院関係者の証言をせん妄の判断材料にしていない事や原告の言う様な被害の有無によって判断が違うと証言するなど、事件を全般的に見てせん妄の判断をしていない事が明らかになりました。また乳房手術がせん妄の危険因子とは記憶していないと証言しましたが、自らの論文の引用を示されて、他の手術より5倍以上の要因であることを認めました。
 弁護側証人は、大学の講義のように語句の定義や考え方をパワポで説明する物でした。そしてCAMというせん妄の評価法に基づいて、事件の全般的な証拠から患者はせん妄状態であったと判断したと証言。また鎮痛薬投入量が少ないとしてよりせん妄を起こしやすくなった可能性があると証言しました。検察の反対尋問に対しても、被告が何もしていないとは証明できないが、行為を行った事を前提に議論するのは論理上誤りであるとキッパリ反論しました。また、他の証人の事前調書にも言及し、とりわけDNA鑑定に対しては、再現性がない、信頼できる資料と比較していないことから科学的分析ではないと科捜研データーをそもそも信頼できないとしました。
 弁護側の検査機関の証人は、検体の採取からDNAやアミラーゼ検査の手順、方法、検査結果を弁護側の依頼した唾液、飛沫、指先での検証実験結果を示しながら説明しました。その説明の中から科捜研データーの資料が不十分であることを浮き彫りにしました。

 本日、署名2052筆を追加で提出しました。本日傍聴時に署名を持ってこられた方も多々おられ、これらは11月末か来年の公判時に提出する予定です。引き続き署名にご協力ください。

11月1日
 本日でもって証言はすべて終了となります。検察側の科捜研の鑑定者、鑑定結果から乳首を舐めたと証言する学者(科捜研を経て米研究所留学)と弁護側のDNA鑑定実験を実施した学者(法医学教授で裁判官用鑑定の教材執筆)の証人でした。午前午後ともに満席になり、傍聴できない方もいました。
 大きな争点は鑑定が科学的かどうかでした。弁護側の反対尋問で科捜研の鑑定書の元になっている鑑定作業手順や結果を記載したワークシートが鉛筆書きであり、消しゴムで消して書き直した箇所が9カ所もある事が明らかになりました。アミラーゼ反応の写真もなく陽性の記述のみ、手順の画像もなく異物混入も疑われても仕方がないことも明らかになりました。また、検体試料の残物も捨ててしまい、検証不可能であることも明らかになりました。DNA量についてもそれが妥当であるとの証明になる標準データーが記載されておらず、検体の数値だけが記載されており、すでに標準データーは破棄してしまっているとの証言がされました。ワークシート記載方法も試料廃棄も警視庁自身が発出している鑑定にかかわる通達に反している事も明らかにされました。この点で鑑定の証拠は科学性に欠けるというのが弁護側の主張でした。
 さらに検察側の学者は、皮膚から採取された検体で鑑定結果のDNA量が出るのは、口腔細胞を含む唾液の可能性が高く、舐める事以外に考えられないと証言し、これが舐めたという証拠だと結論付けました。
 弁護側の証人は、アミラーゼ検査は鋭敏性が高いし、特異度が低いことから、唾液と断定できないと証言しました。さらに生唾、舐め、触診、指先、飛沫の検証実験を行い、データーにはばらつきがあること、生唾、指先の実験以外これほどのDNA量が出てこないことが示されました。また、刑事事件における科学鑑定について問われると、事後に追試ができる事、ましてや刑事裁判ではなおさら厳格性が必要である。検体採取の仕方や場所によって量が違ったり、異物混入の可能性があるので、採取の画像が無いとなると事後検証が不可能である。検体試料を捨てたのも検証不可能にした。標準データーがないのは、DNA量の科学的根拠がないという事。これらから検証出来ない時点で科学と言えないし、書き換え可能なワークシートでは信頼度が低いと証言しました。自らは科捜研に関わる証言もやってきて信頼していたが、今回の事で背筋が寒くなる思いとも証言しました。
 最後に弁護団は、この鑑定結果を司法が鑑定証拠としない事が、法廷に出されたような非科学的データーを作成している科捜研のやり方を変えることになると主張しましたが、裁判長はワークシート自体は証拠物の扱いとしましたが、それに基づいて作成された鑑定書は鑑定証拠として採用し、弁護団の主張を却下しました。予定時間を大幅に超えて17時45分に閉廷となりました。

 終了後の外科医師を守る会主催、弁護団からの報告会には、約30名が参加。弁護団より、この裁判は日本で初めてDNA量が争われる裁判との説明がありました。
 また、鑑定資料として採用された事により今まで、こちらに有利な証言がされてきたが、これが判決に影響する事も想定されるとの意見も出されました。
 守る会からは、引き続き署名(トータルで4126筆提出済)への協力と支援基金がほぼゼロになった事から、基金への協力の訴えを行いました。

 今後の公判は11/20午後、被告人質問、1/8午後、被害者心情陳述、検察と弁護団の弁論、2/20予備日であるが、判決の可能性もある。となっています。

 今後のたたかいの主な舞台は、社会的な運動になってゆきます。署名、基金支援に加え、広報、報告会の開催などが重要になってきます。公判の報告会を開催していただければ、守る会のメンバーが可能な限り参加したいと思います。また守る会としても公判報告会を行う計画をします。判決を直前にした重要な時期なので、引き続きのご支援、ご協力をよろしくお願い致します。

9月25~27日、10月3、4日の公判について

9月25日
午前午後とも約35名で傍聴席に入れない方はいませんでした。
病室で関わった看護師3名の証人尋問でした。また弁護団から提出されたラリンゲルマスク(唾液反応を示す証拠物のひとつ)が、裁判所の職権により証拠採用となりました。
9月26日
午前午後とも約35名で傍聴席に入れない方はいませんでした。本日は、事件当日、病室に入院されていた患者さんの証言でした。これで病院関係者への証人尋問はすべて終了しました。
9月27日
午後のみの公判で、本日から専門家の証人となりました。検察側の「手術後せん妄等」について医師・大学准教授の証人尋問でした。
第2クールが終了したことで、弁護団による報告会を開催し、約20名の参加しました。弁護団から裁判員裁判が始まって、裁判が公判中心主義=公判で認定されたことでもって判断し、過去の調書を証拠としない様相になっている、従って傍聴者と同じものを見て裁判所も判断するとの説明がありました。

10月3日
午後のみの公判で、傍聴席はほぼ満席でした。本日は、「術後せん妄等」について被告側の医師の証人でした。どの様な診断でせん妄と判断されるのか、体験幻覚は訂正される事が難しいといった事まで、パワーポイントや病院等で使われる患者・家族への啓蒙用DVDを使って、素人にも解りやすく証言がされました。
なお、本日の公判終了後に弁護団より以下の報告がありました。
弁護団が病院関係者の証人尋問終了後(9/26)に裁判所へ要請していた外科医師保釈条件の変更が実現し、被告人と事件のあったとされる病院関係者の接近禁止、病院への立ち入り禁止条件が解除されました。経過としては、弁護団の変更要請を地裁が認めた事に対し、検察側が高裁へ抗告、高裁でそれが棄却となったとの事でした。今後、外科医師は病院関係者とも自由に話ができ、集会等でも同席できることになりました。
10月4日
本日は15時よりの公判で、被告側の乳腺外科医の証人尋問でした。乳房の手術に当たっての触診や写真撮影、マーキング、消毒、術後訪室の必要性が証言されました。また整容性を重視した手術が適切であったし、なんら通常の診療行為と変わらないことを印象づけた証言でした。証言の中では、こうした事例を生まないための患者とのコミュニケーションの必要性も強調されていました。本来なら誤解を生まない様に看護師とともに診察すればベストだが、マンパワー不足はどこでも深刻で、とてもその様な現場実態でない事も強調されていました。

次回クールは、DNAに関しての双方の専門家証人が10月30日と11月1日の午前・午後に予定されています。これで証人尋問はすべて終わりとなります。引き続き署名をお寄せ頂くことと裁判の傍聴をお願い致します。