10月30日、11月1日 公判について

10月30日
 検察側と弁護側の共に麻酔科医の証人と弁護側のDNA等実験検査機関の証人でした。傍聴席はほぼ満席でした。
 検察側証人は、せん妄の可能性は低い、弁護側証拠の症例は極めて珍しいものをあげていると主張しましたが、反対尋問で看護記録や病院関係者の証言をせん妄の判断材料にしていない事や原告の言う様な被害の有無によって判断が違うと証言するなど、事件を全般的に見てせん妄の判断をしていない事が明らかになりました。また乳房手術がせん妄の危険因子とは記憶していないと証言しましたが、自らの論文の引用を示されて、他の手術より5倍以上の要因であることを認めました。
 弁護側証人は、大学の講義のように語句の定義や考え方をパワポで説明する物でした。そしてCAMというせん妄の評価法に基づいて、事件の全般的な証拠から患者はせん妄状態であったと判断したと証言。また鎮痛薬投入量が少ないとしてよりせん妄を起こしやすくなった可能性があると証言しました。検察の反対尋問に対しても、被告が何もしていないとは証明できないが、行為を行った事を前提に議論するのは論理上誤りであるとキッパリ反論しました。また、他の証人の事前調書にも言及し、とりわけDNA鑑定に対しては、再現性がない、信頼できる資料と比較していないことから科学的分析ではないと科捜研データーをそもそも信頼できないとしました。
 弁護側の検査機関の証人は、検体の採取からDNAやアミラーゼ検査の手順、方法、検査結果を弁護側の依頼した唾液、飛沫、指先での検証実験結果を示しながら説明しました。その説明の中から科捜研データーの資料が不十分であることを浮き彫りにしました。

 本日、署名2052筆を追加で提出しました。本日傍聴時に署名を持ってこられた方も多々おられ、これらは11月末か来年の公判時に提出する予定です。引き続き署名にご協力ください。

11月1日
 本日でもって証言はすべて終了となります。検察側の科捜研の鑑定者、鑑定結果から乳首を舐めたと証言する学者(科捜研を経て米研究所留学)と弁護側のDNA鑑定実験を実施した学者(法医学教授で裁判官用鑑定の教材執筆)の証人でした。午前午後ともに満席になり、傍聴できない方もいました。
 大きな争点は鑑定が科学的かどうかでした。弁護側の反対尋問で科捜研の鑑定書の元になっている鑑定作業手順や結果を記載したワークシートが鉛筆書きであり、消しゴムで消して書き直した箇所が9カ所もある事が明らかになりました。アミラーゼ反応の写真もなく陽性の記述のみ、手順の画像もなく異物混入も疑われても仕方がないことも明らかになりました。また、検体試料の残物も捨ててしまい、検証不可能であることも明らかになりました。DNA量についてもそれが妥当であるとの証明になる標準データーが記載されておらず、検体の数値だけが記載されており、すでに標準データーは破棄してしまっているとの証言がされました。ワークシート記載方法も試料廃棄も警視庁自身が発出している鑑定にかかわる通達に反している事も明らかにされました。この点で鑑定の証拠は科学性に欠けるというのが弁護側の主張でした。
 さらに検察側の学者は、皮膚から採取された検体で鑑定結果のDNA量が出るのは、口腔細胞を含む唾液の可能性が高く、舐める事以外に考えられないと証言し、これが舐めたという証拠だと結論付けました。
 弁護側の証人は、アミラーゼ検査は鋭敏性が高いし、特異度が低いことから、唾液と断定できないと証言しました。さらに生唾、舐め、触診、指先、飛沫の検証実験を行い、データーにはばらつきがあること、生唾、指先の実験以外これほどのDNA量が出てこないことが示されました。また、刑事事件における科学鑑定について問われると、事後に追試ができる事、ましてや刑事裁判ではなおさら厳格性が必要である。検体採取の仕方や場所によって量が違ったり、異物混入の可能性があるので、採取の画像が無いとなると事後検証が不可能である。検体試料を捨てたのも検証不可能にした。標準データーがないのは、DNA量の科学的根拠がないという事。これらから検証出来ない時点で科学と言えないし、書き換え可能なワークシートでは信頼度が低いと証言しました。自らは科捜研に関わる証言もやってきて信頼していたが、今回の事で背筋が寒くなる思いとも証言しました。
 最後に弁護団は、この鑑定結果を司法が鑑定証拠としない事が、法廷に出されたような非科学的データーを作成している科捜研のやり方を変えることになると主張しましたが、裁判長はワークシート自体は証拠物の扱いとしましたが、それに基づいて作成された鑑定書は鑑定証拠として採用し、弁護団の主張を却下しました。予定時間を大幅に超えて17時45分に閉廷となりました。

 終了後の外科医師を守る会主催、弁護団からの報告会には、約30名が参加。弁護団より、この裁判は日本で初めてDNA量が争われる裁判との説明がありました。
 また、鑑定資料として採用された事により今まで、こちらに有利な証言がされてきたが、これが判決に影響する事も想定されるとの意見も出されました。
 守る会からは、引き続き署名(トータルで4126筆提出済)への協力と支援基金がほぼゼロになった事から、基金への協力の訴えを行いました。

 今後の公判は11/20午後、被告人質問、1/8午後、被害者心情陳述、検察と弁護団の弁論、2/20予備日であるが、判決の可能性もある。となっています。

 今後のたたかいの主な舞台は、社会的な運動になってゆきます。署名、基金支援に加え、広報、報告会の開催などが重要になってきます。公判の報告会を開催していただければ、守る会のメンバーが可能な限り参加したいと思います。また守る会としても公判報告会を行う計画をします。判決を直前にした重要な時期なので、引き続きのご支援、ご協力をよろしくお願い致します。

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