【声明】

東京地方検察庁の控訴に抗議する

 乳腺外科医師冤罪事件に対して、2月20日、東京地方裁判所は無罪判決を言い渡しました。東京地方検察庁は、期日間整理手続きでは証拠提出を拒んで裁判を引き延ばし、法廷では科学的な立証は追求しませんでした。東京地裁が判決で検察の主張を断罪しました。  私たちは大川隆男裁判長の道理と論理性に沿った英断を高く評するとともに、事件当初から無実を確信し、ご支援をいただいた全国のみなさんに、心から感謝申し上げます。

 しかし3月5日、検察はこの判決を不服として控訴しました。地裁判決が明らかにしたのは、むしろ検察の主張の不合理性であり、この控訴は、本来必要な女性患者の精神的ケアを放置し、外科医師とその関係者に様々な負担をかけ、医療現場の不安を増大させるだけの、全く筋の通らないものです。私たちは検察が控訴したことに強く抗議します。

 裁判での専門家証人の証言と記録から、医学的に女性患者が術後せん妄だった可能性が高いことは明らかです。判決では、女性患者の証言は具体的で迫真性に富んでいるものの、術後せん妄の可能性があること、証言を肯定するためには独立した証明力の強い補助証拠が必要であると述べています。検察は補助証拠として、女性患者の乳房を拭ったガーゼ片から出たアミラーゼ反応と検出された外科医師のDNAの量を鑑定書で提出しましたが、科学捜査研究所が作成した鑑定書は杜撰でとても科学的と言えるものではなく、裁判所は補助証拠の証明力は十分ではないと断じました。そして事件があったとするには合理的な疑いをさし挟む余地があるとして無罪判決を言い渡したのです。東京地裁の判決は当然のこととして、広く支持されています。

 病室の状況からも、乳腺外科医としての動機からしても、事件性は全くあり得ません。 この事件は警察・検察の見込み捜査が生んだ冤罪です。乳腺外科医師本人のみならず、医師の診察をうけている患者や、裁判の長期化で被害の記憶が固定してしまった女性患者、皆が被害を受けています。結果的に不利益は患者、国民が被ることになり到底許されることではありません。正当な医療行為が、このような杜撰な証拠で引き続き振りまわされるようでは安心して医療者が命を守ることが出来なくなります。

  私たちは、外科医師の無罪を確信し、東京地方検察庁の控訴に断固抗議します。

                        2019年3月6日  外科医師を守る会