第3回公判の報告

第3回公判の報告 2024年10月28日(月)

 東京高裁805法廷にて差し戻し審の第3回公判が開かれました。32席の傍聴券を求めて125名が並びました。朝方から勢いよく降っていた雨は午後2時の開廷の時間には止んでいました。
 今回は、弁護側が推薦した真下知士氏(マシモトモジ東京大学医科学研究所教授)の証人尋問です。真下氏は 30年以上遺伝子の研究に携わり現在日本ゲノム編集学会会長を務めています。真下氏はまずDNA鑑定、DNA定量について解説し、科捜研が行ったDNA定量検査の問題点について述べ、検察の依頼で池谷氏が検証したDNA定量検査については「恣意的で賛同しない」と結論付けました。

開廷前に裁判所表門で街頭宣伝
開廷前に裁判所表門で街頭宣伝

証人尋問の主な内容

科捜研の鑑定について

  • DNA定量検査に影響を与える要因は、資料、鑑定キット、実験器具、検査者の手技、実験環境、検出方法等があげられるが、検量線は検査ごとに作成することで、測定値を正確に解析できるだけでなく、様々な要因がその日の環境条件に合っていたことが確認できる。さらに、自分の実験で得られたデータの信頼性、再現性、正確性を保証することができる。検量線の再利用は残念。
  • 科捜研が行ったDNA定量検査はDNA型鑑定が目的であり、一人が一度しか行っておらず試料も保存しておらず科学的信頼性を著しく欠くデータである。しかも古い方法で精度が低い。このキットだからこんなに高い値が出た。定量を目的とするのであれば一般的にもっと精度が高い方法がある。これは担当者が悪いのではなく、このような鑑定をやらせた組織に責任がある。

池谷鑑定について

  • 唾液中のDNA量がごく少量だったために唾液DNAを断念して、口腔スワブDNAの定量を行った。唾液のデータでみれば同じキット、使用法、実施者でもばらつきが数倍~数十倍と非常に大きい。
  • 高濃度DNA1.612ng/μlはバラつきや検量線では説明がつかない。唾液から得られたDNAとは
    考えられない。高濃度の値が出た理由として①サンプルの取違い・混入、②実験操作や解析方法
    の間違い、③データの見間違い・書き間違い、思い込み「恣意的」の可能性が考えられる。
  • 「恣意的」とは意識して嘘を書いたということではなく、測定結果の中から、自分の仮説にあったデータだけを選んで使用することで、客観性のない主観的な(自分勝手な)結果になることをいう。実験者として恣意的なデータを排除することがとても大切である。

 証人尋問の終了後、裁判所は真下意見書を鑑定書として採用した以外は弁護側、検察側双方から出ていた証拠申請についてすべて却下しました。高野主任弁護人は証拠申請していたワークシートについて「最新の技術を使えばどのように書き直されたのかがわかる可能性がある。この法廷では原本すら見ていない」と意義を申したてましたが認められませんでした。その後最終弁論と判決の日程があげられました。正式には後日指定されます。

・最終弁論 2025年1月22日(水)10時30分 弁護側40分、検察側40分
・判決   2025年3月12日(水)14時

 公判終了後、近隣の弁護士会館で報告会を開きました。
 弁護団から5名、全体で40名の参加でした。弁護団から小口弁護士は「真下先生は完璧に話をしてくださったが、裁判所は二審で経験したように理由も書かずに有罪にすることもないとは言えない。裁判所に正しい判断をさせるため、もともとわいせつ行為は不可能だという世間の声を集中させることが大切だ」と説きました。重要な証拠であるワークシートを証拠採用しなかった点について水沼弁護士は、「裁判長は1.612の数字しか興味がない。無罪の証拠を調べないで有罪と書けば、上告されて破棄差し戻しとなる危険性がある。自分は甘いかもしれないが科捜研の鑑定で有罪とは書きづらいのではないか」と述べました。

第26次裁判所要請行動を行いました

 10月30日 第26次の裁判所要請行動を16名で行い、署名3593筆を提出しました。累計は5万2千172筆になりました。参加者からは以下のような発言がありました。
 「病室の状況から、女性患者の訴えはせん妄によるものである事は明らか。ぜひ現場を見てほしい」「患者が手術後にせん妄状態になることは特別珍しいことではない」「医師の逮捕は民医連の病院に対する弾圧の側面がある」「本人や家族の心身のストレスは耐えがたいものがある。はやく安心して生活できる状態にしてほしい」「袴田事件では裁判所は捜査機関の捏造を認めた。裁判所が冤罪に加担するようなことはあってはならない」
 裁判所要請行動はこれからも毎月続けていきます。引き続き署名活動にご協力ください。

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