差し戻し審の公判が始まりました

第1回公判の報告 2024年9月18日


東京高裁805法廷で差し戻し審の第1回公判がありました。傍聴席42席の805号法廷で行われます。家族や報道関係者の席が確保されているので抽選で傍聴できるのは28席でした。傍聴券を求めて約100名が並びました。

第1回公判は弁護側・検察側双方が意見陳述をするものと聞いていましたが検察は書面のみの提出でした。

弁護側は30分を希望していましたが裁判所の意向で15分間口頭弁論を行いました。高野主任弁護人は「一度しか測定していない、しかも書き換えた跡があるワークシートしか残っていないDNA定量検査で人を有罪にしてよいのか。その分野の専門家の間で信頼できるものとして認められる水準のものなのかを明らかにする。」と陳述しました。

双方から出ていた証拠申請を裁判所は留保しました。

場所を移動して報告集会を行い弁護団から5名、全体で40名以上が参加しました。高野主任弁護人は口頭陳述の重要性について「傍聴人が何をしているかわからないような手続きでは公開裁判の意味がない。書面しかみていない裁判官にも理解してもらうためだ」と説明。触診でも大量のDNAは付着すること、ワークシートも調査するよう証拠申請してはいるが、迅速に無罪判決を確定させるために、弁護団としては2人の証人尋問に全精力を集中させたいと報告しました。

 参加者から「刑事裁判で重要なのは真実の解明であるはず。差し戻し審では全く不毛なことをしている。真実の解明は行わないのですか?」との質問がありました。高野弁護士は「差し戻し審は最高裁の出したポイントに拘束される。不毛であってもDNA定量検査の数値が正しいかどうかを検討しなくてはならない。もちろん必要な手続きをやったうえで、真実が何かを明らかにする」と答えました。また「100名以上の大法廷で行うべきではないか」との質問には「私たちも要求はしたが、東京高裁から部屋を借りることが出来なかったとの返事だった」そうです。今後の私たちの裁判所要請行動でも広い法廷を要求をしていきたいと思います。

第2回公判の報告 2024年10月9日

雨天でしたが開廷前に街頭宣伝を行い短時間でリーフレットを 50 枚以上配りました。今回の証人尋問は検察推薦の京都府立医科大学法医学教室教授の池谷博氏です。池谷証人は警視庁科学警察研究所に 2005 年から 3 年間勤務した経歴があります。前回と同じ 805 法廷で開かれ一般傍聴席は32席でした。傍聴券を求めて 106 名が並びました。

証人尋問の具体的な内容

  1. 科捜研が実際に使用した機器スマートサイクラーⅡとヒトゲノム定量キットを用いた DNA 定量検査でどの程度の精度、バラつきがあるかについて。連続した4日間の日間変動、1日5回測定した日内変動、日間変動では 3 名の検査者で同じ検査者で最大 3 割程度、異なる検査者の比較では平均 2 割程度、日内変動では同じ検査者、異なる検査者でそれぞれ最大4割程度の誤差が生じた。
  1. あらかじめ作成していた検量線を使用することで、どの程度の誤差が生じるのかについて。各検査者が初日に作成した検量線を使用して残りの 2 人の測定結果を当てはめて定量値を計算したところ平均4割から5割の誤差が生じた。ただし測定は様々な条件、室温や湿度、検査者の手技、マイクロピペットを強く押すか弱く押すか、目盛りの回転させる方向、ミキシングの方法、機器のコンディション、等々で誤差が発生する。

今回使用したDNA定量試薬は警察にのみ販売されている。試薬の誤差をメーカーは教えてくれない。検査センターや病院の検査室が行っている第3者による外部精度管理を科捜研はやっていない。当初唾液で DNA 定量をするつもりだったが測定値が小さすぎて断念。唾液採取キットのフィルターに吸着された可能性があるが確認はしていない。検査者の頬の粘膜を綿棒で拭ってサンプルとした。自分を含む3名で行ったが 1 名は途中で老眼が酷いから(良いデータが得られない)と辞退したので別の人と交代した。検査者はこの装置を使い慣れていなかったが、科捜研であれば毎日使っている装置なのでより精度が高いデータが出たはずだ。今回3名の平均値や標準偏差を計算したが数が少なくて統計学的な意味はない。ワークシートを鉛筆で書いたり消しゴムで消したりするやり方は適切ではないが、それをもって測定結果が信用できないということにはならない。

公判終了後場所を移動して報告会を開きました。弁護団から 7 名、合計約 30 名が参加しました。

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